日本のすがた・かたち
東海地方は梅雨に入ったようです。
晴耕雨読をモットーとしているつもりの私は、長雨のこの時期は気に入っていて、好きな本を読み、設計に耽ることができる佳期としています。
この雨季に七夕(たなばた・しちせき)があります。
月遅れの8月7日に祭りをしている所もありますが、毎年7月7日は雨模様で、豪雨にたたられることもあり、夜空で展開される男女の逢瀬には相応しくない時期ですが、シッポリと濡れると思えは雨の中でも悪くはありません。
その逢瀬を助けるためにカササギが羽を広げて天の川に橋を架ける。
牽牛と織女はその橋を渡って一年振りの逢瀬をするというわけです。
「鵲橋横漢(じゃくきょうおうかん)」カササギの橋 横の漢(川・かわ・天の川)というストリーは、子供心にも、カササギという鳥は粋なことをするものだ、と思っていました。
七夕は元来、中国での行事であったものが奈良時代に伝わり、日本にあった棚機津女(たなばたつめ)の伝説と合わさり生まれた言葉といわれ、また、お盆行事の一環として、精霊棚とその幡を安置するのが7日の夕方であることから7日の夕で「七夕」と書いて「たなばた」と発音するようになったといいます。
また、我が国では詩歌・裁縫・染織などの技芸上達を願う、「乞巧奠」(きこうでん、きっこうでん)の祭事となっています。
いつの世も技芸上達を願う人の心は一緒です。自分を高めて行こうとする努力は老若男女に変わらないものだと思います。
今年は六月末に「乞巧の茶事」を催します。
私の願う乞巧は、欠点の克服ではなく、好きなことをより好きなように行えるようにとのことです。
若い時分、欠点を直したいと思い、辛い修行の真似をしたこともありましたが、ある時から、自分の長所と思えるところを伸ばすようにしようと改めました。
欠点とは、誰かと比較、差別することから生ずると分かったからです。
その結果の良否は分かりませんが、進んで好きなことをするようになってから、欠点と思うところを忘れるようになりました。
誰でも欠点を直すには苦痛が伴い、徒労に終わるのが常です。
しかし、長所を伸ばそうとすれば楽が伴い、達成しやすくなります。
先人は、自分の生来の性格が、明るい、賢い、強い、やさしい、の何れにあるのかを知ることができれば、道は自ずと開かれると教えています。
つまり、欠点は比べなければ長所となり、その逆にもなるという分けで、言ってみれば、自分の考えも70億人分の1のものです。そう自慢しても始まらないものといえそうです。
巧まずして伝えられてきた茶事は、己の長短を見せてくれる出会いといえます。
また新たな道が開かれる二刻でもあります。
今、その日に向かい、夜な夜な客の顔を思い浮かべながら、茶杓を削っています。
都々逸
カササギの橋を渡って逢えるが嬉れし 何を話そかそれとも何を