日本のすがた・かたち
二十年ほど前、自分はどのようにして建築の設計をしているのか深く考えたことがありました。
きっかけは建築家と設計手法について議論をしたことでした。
改めて自分流とは何かを振り返ってみたら、ある見方を繰り返しながら考えながら進めていたことに気づきました。
それは四つの見方で価値観というようなものでした。
自分が設計する建築は、
1.優れたものか、劣るものか=建築の優劣から見る
2.本物か、にせものか=材料や工法の真偽から見る
3.誰にとって損か、得か=工事費や経済性・損得から見る
4.依頼主、社会、環境にとって良いか、悪いか=デザイン・善悪から見る
要約するとこのような見方から設計をしていたように思います。
これは、人間の「生活環境面」、「文化面」、「経済面」、「芸術面」の窓といいかえてもいいものです。
後年、この四つの見方はものごとに対する価値観の違いということに気がつきました。
これを次元的にみると、
優劣から見る(空間・3次元)、真偽から見る(時間・4次元)、損得から見る(勢力・5次元)、善悪から見る(志向・6次元)=宇宙の実相。
この見方は人間の価値観の違いにそのまま当てはまると思うようになりました。
この6次元思考方法は飛騨の口碑を伝えた山本健造氏が提唱したものでした。しきりに空海が請来した「曼荼羅」に傾倒していた頃に出会いました。
人間はものごとをどのような見方(窓から見るか)をするかで見解が分かれます。
どの見方が正しいかどうかの判断は、その時と場所と状況によりますが、皆自分が正しく他は間違いだとします。主義や思想が生まれるのはこの見方の違いからといえます。
価値観の違いにより、森羅万象の見方、感じ方には差が生じます。この差は諍いや戦いに発展します。意見の違いからくる対立です。
我が国の先人は、この見方の差から生じる問題を話し合いで解決をしようとしてきました。
「和する」という考え方です。力ではなく、話し合いで解決する智慧を育んできました。
「和を以って貴しと為す」とか「万機公論に決すべし」。すべてのことを話し合いで決めるという智慧です。
話し合いは、互いが価値観の違いを他に分かってもらいたいという行動です。この前提には互いを思いやる優しさが必要となります。受け入れるというシグナルです。
それを人は愛と呼び、仁といいました。
設計に対かう時、いつもこの四つの窓辺から眺めています。
思考方向が都度変わると分裂症ではないかと思うことも度々ですが。
自分が手がけたものは、なるべく長い時間、使う人に大事にしてもらえるよう…。
お願いしながら、祈りながらです。
画像: 上 密教「各具マンダラ」図 山本氏はこれで六次元世界を説いた。
下 『神秘の六次元世界』 山本健造著 (1995年福来出版 刊)
TP:アボリジニの聖なる「チュリンガ」(宇宙の実相を現していると思える) 自画