日本のすがた・かたち
初々しく、とても品が良いと思いました。
この少女は幾つくらいかな、と思った途端、なぜか不思議な気持ちになりました。
見ると不気味なほどの神秘さを醸し出していることに気づきました。
(眼だ!・・・微笑んでいる口元だ・・・)
そして年齢不詳の頸でした。
(それにしても眼の力は何か。耀きは水晶なのか・・・)
そして何ともいえない存在感はどこからくるのか、と思いました。
仏師の弟子が習作で作った少女像は私を魅了しました。
今、若者の十数人に私は期待をかけています。将来のものづくりや伝統を担う逸材ばかりです。
その中に四年前に大学卒業と同時に、富山県南砺市(旧井波町〉の仏師藤崎秀胤氏に弟子入りした、森田彩乃さんがいます。
彼女には仏師を志す時から縁があり、毎年、正月とお盆休みには習作を携えて訪問してくれています。
今年はこの「少女」を見せてくれました。
一、二年目は手などの習作でした。三年目は聖観音像でした。
そして今年はこの少女像「月あかり」です。
木の彫刻は、木の持つ霊性のようなものをどのように表現するか、ということに尽きると思っている私は、制作された仏像や人物像に直感的な精神性を観ます。
「何故か見えない力のようなものを感じるが・・・」
彼女は幾つかの私の問いかけに答え、そして数枚の写真を見せてくれました。
頭部には水晶が内蔵されていました。
(そうだったのか・・・。このエネルギーは内部からも・・・)
彼女の想念がこの水晶に籠められていたのだと思いました。
眼は「ラブラドライト」曹灰長石(そうかいちょうせき)、歯は自作で貝で作ったということでした。
次の日にKNOB(ノブ•中村亘利)さんが来て、少女の写真を見るなり、「300歳、宇宙的だ!」といっていました。
感じるものがあったのだと思います。
我が国には先人に学び、ものづくりの魂を継承する若者が大勢います。民族の文化は損得や優劣では測れないものによって伝達されて行くものだと思います。
彼女には「三島御寮」造営の折には、御堂に安置する「薬師如来」の制作をお願いしようと決めています。
木の彫刻に身を投じた若者を、心から応援したいと思った新春でした。
写真: 森田彩乃作「月あかり」 頭部の中の水晶(撮影:森田彩乃)
「聖観音」(撮影:染谷 學)