日本のすがた・かたち
実業の世界で成功した人たちの行動パターンは典型的な朝型といいます。
かつて体験した禅寺の修行道場の朝は、未明3時半起床に始まり、夜9時就寝でした。
「早起きは三文の得」、とは昔の人の教えで、これが日本人の生活の規範とされ、夜に行動する者は余り評価されずにいました。
先日、典型的な夜行性クリエイターと話していて、思い致したことがありました。彼は少し体調を崩していたため、夜行性の生活パターンを変えなければといいましたが、「夜陰に紛れて活動するほど真理に近づく…」といって励ましてやりました。
「早朝は闘いの勢いはあるが、創造の世界はなし」。
これが体験を通して納得してきた私の人生訓です。
ビジネス思考に向いているのは早起き型だといえますが、創造思考は夜行性の領域だと確信しています。
黄昏どきになると、なぜか気持ちが高揚してきて、そして内向きになり、妖しい陰鬱の世界に入り込み易くなるのは私だけではないと思います。
想像する、妄想する、夢をみる、夢をすがた・かたちにする。これは皆、健康的な明るさの中での所業ではありません。目を閉じて想い巡らすという、陰影の世界です。
私の夢は夜ひらきます。
現在の夢は、世界に遅れること30年の日本の木造建築復活のプログラムです。
先の戦争により首都東京が空襲で焼け野原になったのを見た政治家が、東京をコンクリートにして燃えない都市にすると、「建築基準法」を作ったといわれています。
その法規制のため、本格的な木造建築が造れなくなりました。
現在、欧州のノルウェ―などでは、公共建築は原則木造で造られ、オスロの空港も木造です。ドイツでも木造建築は盛んで、巨大な空間を木造で造る民族の先進性を目の当たりにする光景です。
なぜ我が国では木造建築を造ることを規制され、金物を頼りにした木質系の紛い物建築しかできないのか不思議でなりません。
森林国にできる自然循環サイクルから、省エネ、雇用促進、CO2対策などの環境保全に関する答えが、木造建築には詰まっています。
戦後70年を経て、漸く日本の森林が建築の主要材料として使えるように成長してきました。我が国の優秀な木工技術、防炎技術や構造的見地からも見ても、木造建築の時代が到来していると思います。
「木造は燃える」これが東京大空襲のトラウマです。
燃えないように、火の用心をし、災害で崩壊したら直ぐに建てなおす、これらは先人が智慧として伝えてきたものです。
なぜ、東大寺のような巨大な木造建築を造ることができないのか。そう思って20年経ちました。
これが私の夢のつづきです。