日本のすがた・かたち
この30年ほど、春の彼岸に植え替えをして、7月には見事な蓮の華を愛でるのを常としていました。
ところが何を思ったのか、この二年は葉ばかりが育ち、芽も出ず華の姿を観ることができませんでした。
土も替え、肥料の身欠きニシンも欠かさずそれは大切にしてきました。
まさか新型コロナウイルスの所為では、と疑ってもみましたが、二年も咲かずにいると愛想が尽き、この辺が潮時かと思うに至り、芽が出ていた蓮根をすべて処分すべく、ゴミ袋に入れて捨てる用意をしました。
5日ほど経ったごみ収集の朝、ふと、少し萎れた蓮根に話かけました。
「今年、華を咲かせなかったら、オロシガネですりおろしてしまうからな!」。
有名な大賀ハスの交配種であり、長年連れ添ってきた仲なので、ラストチャンスと思ったのでした。
鉢は二つありましたが一つにして、芽付きの根を四本入れました。
多分弱っているのでダメかとも思い、今回は土だけ替え、肥料は施しませんでした。
それが7月5日の早朝、芽を出し、あれよあれよという間に成長し、立派な華を開くに至ったのでした。
そして続きの二つの華も。
このところコロナ禍やウクライナ戦争、元首相襲撃など暗いニュースが多く、仕事に没頭していることをせめてもの救いとしている最中、蓮の開花は嬉しい出来事でした。
(そのつもりになれば咲けるじゃないか・・・)
などと紅蓮の華に話かけ、来年も呪文をかけてやるぞ、と独りほくそ笑んでいます。
生き物は命の危機に直面すると思いがけない力を出す、とは先人の言。私も何時の間にか喜寿の歳。日々が命の危機に直面しているといえばいえる年寄りです。
極楽浄土を思わせる蓮の美しさに心を洗われ、改めて「今ココ」を一心に生きて行こうと思い、蓮の台に座った仏の姿に掌を合わせました。
〽 蓮の色香に迷ったアナタ 「それって、ネ」 チホウかニンチかワクチンか