日本のすがた・かたち
12月23日から数日間続いた「夜咄の茶事」が終わりました。
3日前に道具などの後片付けと、掃除を済ませました。
茶事は掃除から始まります。三日前までに、茶席や水屋の埃を落し、畳に掃除機をかけ、固く絞った雑巾で拭いた後、乾拭きします。棚なども掃除をします。特にトイレ周りは念入りにです。
炉の灰を新たに入れ、使う釜に合うように五徳の高さを決め、灰型を整えます。
外周りは、客の入る動線に沿って、門前から玄関、寄付待合、袴付、トイレの掃除をします。露地は植栽の枯葉をとり、飛石、外腰掛、外トイレ、蹲踞(つくばい)周り、躙口(にじりぐち)と掃除をし、蹲踞の手水鉢を清め、水を張り、中門の枝折戸なども傷んでいるところがあれば修理をします。
二日前には予定していた道具を揃え、「茶会記」に沿って、水屋に入れ使えるように用意しておきます。
茶懐石の料理係は、決めておいた「献立表」にもとづき食材を調達し、出し汁などを作り、使用する器や何種類かの竹の箸などを用意します。また主菓子、干菓子も用意します。
前日には寄付や本席の床之間に掛物を掛け、風袋などの折れなどが無いようにします。
また風の強い日に備え奉書紙で手燭の風防を作り、雨に備えて露地笠の用意もします。
亭主を補佐する半東とも綿密な打ち合わせを行い、道具の確認やお点前のおさらいをします。
夜咄の茶事の進行は、寄付にお湯を出し、外腰掛で向付をし、席入、主客挨拶、問答、前茶、初炭、懐石、中立、濃茶、続薄茶、止(留)炭、挨拶、退出の順でした。
当日は天候に恵まれ、風もなく穏やかな黄昏時から始まりました。
早めに水を打った露地に降り、中門で客と和ロウソクの灯り(手燭)を交換するとき、胸の鼓動が高まりました。この時を一年前から待っていたのです。
茶杓を削り、茶入や茶碗や炉縁、小間用の灯火の竹檠(ちくけい)を作り、心をこめた手料理を差し上げ、酒を酌み交わす。
4時間はアッという間の出来事でした。そして時を惜しみながらの別れが…。
茶の湯の面白さはいうまでもありませんが、茶事は日本人が世界に誇りうる「おもてなし」の極みのような気がします。この生活風習は無形文化遺産となった和食とともに、世界に広まっていくことになると思います。
掃除に始まり、掃除に終わる。もてなしの真髄はここにあるような気がしています。
インドの竹で二本の茶杓を削り使いて
「霊山の杖」にまつわる夜咄に語る縁を深く覚える
この夜にと削り名付ける「寿慈阿多」の茶を掬いたる影の妖しさ
(写真 上 水玉模様の炉縁蒔絵(水晶殿古材・床下杉大引き)
下 茶杓銘「霊山ノ杖(りょうぜんのつえ)」 茶杓銘「寿慈阿多(スジャータ)」 インド・ブッタガヤの竹使用)