日本のすがた・かたち
およそ地球上に存在する建築物は、何かの意図と目的をもって造られています。
仕事柄ですが、建築を想うとき、観るときに、なぜこの土地を選んだのか、なぜこのよう
な造り方をしたのかをよく考えます。
神の社である伊勢神宮は、我が国に存在する最も日本的な建築といわれます。
天皇家の祖神を祀る聖地にあり、古来より保たれてきた日本建築のルーツがそこにあるとされているからです。その神宮の建築群は、創建当時から、造営主である天皇家の意図と目的が建築となったと考えられてきました。
では、なぜ7世紀末、伊勢の山奥に天皇家の先祖が祀られることになったのか。
20年間この謎から離れられずに来ました。
なぜ天皇の御座する宮中に先祖が祀られていないのか。現在、宮中三殿の賢所に祀られているのが天照大神であるならば、伊勢の神宮正殿に祀られているのは分身なのか、などなど、私の疑問はいくつも膨らんで、いつしか神宮の謎にのめり込むことになっていました。
そして今年の第62回式年遷宮の年に、ようやく謎解きに終止符を打つことができる運びとなりました。現在、メモや原稿を一冊の本にまとめ出版に向けて追い込みに入っているところです。
先日、お白石持ち行事に参加し、真新しい内宮正殿を眼の前で拝観しました。
唯一神明造といわれる小さな木造建築に、古代の歴史や人の生きる術が充満しているように感じました。
蒼穹の空を仰ぎながら、いずれ私も先人の仲間入りだな、と思いました。
お白持ち行事に参加して
” 正殿を 仰ぐ空みる 蝉しぐれ”
(写真 20年前の式年遷宮 内宮ご正殿 神社本庁)