日本のすがた・かたち

2011年9月12日
お野立ち所

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12年前の5月、静岡県で第50回全国植樹祭が行われました。
場所は伊豆の「天城の森」でした。
そのメインステージの前に天皇皇后両陛下が臨まれ、記念植樹が行われました。
天皇がお立ちになる東屋を「お野立ち所(おのたちじょ)」といいます。
これをあずまやと呼ばないところに奥床しさがあります。
木造の「お野立ち所」は、この時の静岡県が初めてとのことで、当時の県を始め、関係者の方々の思いが結晶したかのような出来栄えでした。
● フォルムは富士山(日本の象徴)に懸かる天蓋(てんがい)のイメージ。
● UFOのような飛翔感のあるスタイルと色彩
● 様式は天平時代をベースに近未来化した、どこにもないもの
● 移築可能で、300年位は対応できる太い木による建築。
● 金物を使わない総木組の建築。
● 木造柱の構造は、伊勢神宮と同様の掘立式(ほったてしき・柱を地中に埋める式)。
● すべて地元産出の木材使用。
以上のような構想のもとで造られました。
HP-0912-1.jpg来年の11月に皇太子殿下による「育樹祭」が同じステージで行われるようです。
父である天皇のお手植えの樹を、子である皇太子が後に育てる育樹の儀式。
日本人の精神性の在りようをほうふつとさせる、心温まる祭事です。
12年経って、また拝見することになりました。
太い柱が大きな空間を担い、木組みが隅々まで役を成し、美しい古色をたたえていました。
(ありがとう、よろしく……)
抱きしめた柱の温かさが、12年経ってまたよみがえりました。
一心に構想を練っていたあの頃の過激さも……。
(写真 天城の森・お野立ち所)


2011年9月12日