日本のすがた・かたち

2020年5月23日
「如庵」の向こうに

ご多聞にもれず、世の自粛要請によって巣ごもり生活が続いています。

新型コロナの影響は地球規模となり、ある程度の終息はあっても、特効薬やワクチンが開発されなければ、第2波、3波は避けられないようです。
良い形でコロナと共存していかなければならないのは必然で、今、「人間もウイルルス」だ、と改めて思い知らされています。

 

この一ヶ月ほどは本の出版に向けての執筆生活でした。
幸いに人に会うことも少なく、我が裡に深く入り込める時間が作れたので、これ幸いと原稿に向かっていました。

私はかねてより日本の建築の精髄を見聞し、その意たるところを記録に留めておきたいと、「伊勢神宮」、「熱海・水晶殿」などの考察研究を上梓してきました。
その見聞や研究の動機というのは単純で、自身の建築設計の質を上げたいというものでした。つまり、私の設計の水準がどの辺にあるのかを探る手立てでもありました。
過去、住宅から始まり、30数種の用途の建築を設計してきましたが、その問いかけは今でも続き、筆を擱くまでそれは絶えそうにありません。

 

今、私を原稿に向かわせているものは「茶室・山月庵」です。
この茶室はもう十数年前から気にかかっていて、訪れる度に興味をひかれ、謎が膨らむものでした。
私好みの国宝「如庵」は、以前犬山で建築団体依頼の講演をした折に大概のことは得心し、未練はなくなりましたが、こと「山月庵」に関しては未だに気を惹かれるものが大で、「如庵」の向こうに見えていたのが「山月庵」でした。

 

建築の設計を始めると、日頃の饒舌は影を潜め、巣籠症候群に罹ります。執筆も同じ様相で、自閉性適応障害を呈し、どちらも習慣性というところが特色です。その都度、周囲は迷惑するものですが、ここは何処かの国と同じように一党独裁を貫いています。

コロナも一党独裁も米大統領選も、そして私の自閉症生活もなるようになると思います。
「心配するな、成るようになる。」とは一休禅師の遺言。
この頃、この言が妙に私を包んでいます。

 

  人の世は 金の亡者の浮き沈み 食うて出てくりゃ是非もなし

 

 


2020年5月23日