日本のすがた・かたち
初春に神と仏とスメラミに
会うことの由なぜか知るかと
日本人の年の初めは神社で、暮れは寺院でした。
これは新年の初行事が神社で初詣、大晦日は寺院で除夜の鐘を聞くという風習からいわれていることのようです。神仏を混合している日本人の精神性にこの風習は深く根を下ろしています。今、流行のAKB風的若者たちが、実はお祖母ちゃんや親の影響で、神社仏閣の出している「お札」なるものを大切にし、それを頼りにしていることなどを聞くと、なぜか日本人の精神構造の深遠さを垣間見る思いがします。
今どきの高校生に神社と寺院のとの違いを問えば、その三分の一ほどは、神道と仏教の違い、ひいては神社とお寺の違いについて、はっきりわからないとのことで、神社とお寺とどう違うかも知らない生徒が多いと教師に聞きました。これは神道と仏教のそれぞれの基本的な違い。日本の歴史の中でどのように関係し合って来たかなど、宗教に関する教育がなされていない現状が露呈されているものといえます。
しかし、日本人はなぜか神社やお寺に足を運びます。
この信仰心の高さを、私たち自身は意識せず行動していることになりますが、ここが外国人に分かりづらいものになっているようで、このように信仰心に篤い日本人の行動が、国際的に誤解されることのないよう説明していく必要があるようです。
そして正月は天皇家です。
日本の新年は天皇陛下の「四方拝(しほうはい)」の祭祀儀礼から始まります。
この儀式は1年の最初の宮中祭祀です。天皇陛下は元旦の午前5時半、宮中三殿・神嘉殿前庭に出御されますが、その前日、大晦日の夜から沐浴や潔斎など清めの儀式を執り行なわれています。
陛下は黄櫨染袍(こうろぜんのほう)と呼ばれる、陛下のみ着用が許される衣装を召され儀式に臨まれ、庭の中央の、畳が敷かれ、四方を屏風で取り囲まれた中に移動されます。
その中で陛下は、まず「属星」と呼ばれるその年の星を7回唱え、伊勢神宮の方角を向いて再拝をされ、次いで四方の神々や各神宮・神社に向かって再拝、さらに天皇陵に向けて両段再拝をされて祭祀を終了されるそうです。
その後、「歳旦祭(さいたんさい)」( 四方拝に続いて午前5時40分頃から行われる「小祭」と呼ばれる祭祀に属する儀式)、このあと「新年祝賀の儀」、と5回の祝賀を受けられます。
また、1月2日には恒例の「一般参賀」において国民からの祝賀を受けられ、1月3日には、「元始祭(げんしさい)」と呼ばれる「大祭」に属する儀式が行われます。
これは年始に当たって皇室の起源と由来を祝い、国家国民の繁栄を祈る儀式で、天皇がお告文(おつげぶみ=祝詞)を読み上げます。それは、この日本列島で国民の幸せを祈られる唯一の存在としての古式床しき儀礼です。
古神道と日本仏教そして皇室。
約5万年も前から続くと思われる日本精神文化の精華がここにあります。
私は正月を迎える度にこの思いを強くしています。
その精華は儀式としてかたちが整えられ、先人の叡智が積み重なってきて今日に至ったものといえます。次代に伝えたい日本の文化のすがたとかたちです。