日本のすがた・かたち

2020年2月15日
濃厚な接触

今、世界で最大の関心事は新型コロナウイルスです。
何しろ目に見えないウイルスが世界を席捲し、人間の歴史を変える可能性が出てきたからです。

 

事の始まりは湖北省武漢といわれ、現在、感染は中国ばかりか世界20数か国に及んでいます。
2002年11月に、中国南部広東省で非定型性肺炎の患者が報告されたのに端を発し、世界30数か国に広がったSARSも新型コロナウイルスでしたが、今回のウイルスは未だ不気味の領域で、恐怖が増すばかりです。

 

以前、中国に旅をしました。
初回は上海に入り、蘇州、武漢、西安、洛陽から北京へ。二度目は大連に入り、瀋陽などから北京への旅でした。行った武漢の町は発展途上でした。

列車の旅でしたが常に森や広大な土地が付いて回る景色がありました。山々は山頂まで耕され、「耕して天に至る」とはこのことか、と驚きました。
ただ不思議に思えていたのは、何処を見ても建築に使える木々が見当たらないことでした。
帰ってきてから、日本の山河を目の当たりにして、人間は何処で生息するかによって身体ばかりか、民族の心の在り様も違うのだと改めて思い至りました。「気候風土の違い」という言葉もその折に身に沁みました。

 

日本の国土の約7割は森林に覆われています。
森林は人間が生息する基本的要件である水を貯え、川や地下水となって飲料水となり、動物を育み、もたらす養分は川に流れ、海に流れ、海の生物を育みます。また森林は、建築など生活用材として人間の生存に寄与しています。
我が国の植林は、最初密に植え、やがて間伐して一定の間隔を保ち、木を育てます。その一定の間隔こそが日本林業の知恵で、美林といわれるほどの風景を生み出しています。

 

そしてこの頃、その一定の間隔と新型コロナとの関係が妙に私の中で交差するようになりました。

新型コロナと森林には脈絡がなさそうですが、私の頭の中では共に自然循環サイクルの中の生物であり、植林も、人の関係もウイルスとの関係も、自然発生的な距離感を必要とするところで繋がっています。

その新型コロナは濃厚な接触で感染するといわれます。
2メートル程の距離で人に接するようにとの指導がありますが、満員電車などではそうは行かず、男女の仲もその様な分けにも行かず、ついつい濃厚な接触に・・・。

この数日、コロナウイルスを人の大きさと想定して、病原菌で街が溢れる様を想像しています。私も新ウイルス人間になる可能性がありますが、せめて林業に倣い一定の間隔で人の接しようと思うところです。

今はただ、無抵抗に時の過ぎ行くのを待つばかり。せめて濃厚な接触ではなく淡い交わりで・・・と。

 

                    〽︎ 新型コロナで 歴史が変わる 主義も掟も 喰い潰す

 

 

画像:2019新型コロナウイルス

 

 


2020年2月15日