日本のすがた・かたち
今日11月10の「祝賀御列の儀」をもって国事による天皇即位礼のすべての儀式が終わりました。
続いて11月14~15日から皇室行事の大嘗祭「大嘗宮の儀」が行われます。
「大嘗祭(だいじょうさい)」は、毎年11月に宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)として行われる「新嘗祭(にいなめさい)」を即位後、初めて大規模に行うもので、皇位の相続儀礼とも即位儀礼とも異なる、我が国独自の天皇霊継承儀式で、その儀礼の中に、神・天照大神と人・皇位継承者とが共に寝て、共に食す、という一世に一度の重要な秘儀があります。
この度も、その年の新穀を二つの地域から選定し(4月)、稲の抜き穂行事(9月)、酒の製造、貢納物の調達、神服の用意(10~11月)。禊の行事(10月下旬)。仮宮殿の造営(10月末完成)。神・天皇に対する奉納(11月14日)。大嘗祭—悠起殿・主基殿の儀(11月14日の夜から翌朝の暁まで)へと進みます。
儀礼の次第は、天皇は事前に宮殿にて「大忌御湯」である聖水による沐浴をし、11月4日当日に大嘗宮「回立殿」で「小忌の御湯」という沐浴による禊祓の儀を行います。この時天皇は「天羽衣」なる湯帷子に着替え、湯桶に入り、次いでそれを脱ぎ捨て、上がってから別の「天羽衣」に着替えます。この沐浴のというプロセスを経て、新帝は「神の資格」を得る、と伝えられています。
それは、鎮魂の式による霊の復活と新しい生命の誕生を現わしていて、復活蘇生までの間、物忌みのために身につけていたのが天羽衣で、それを脱ぎ捨てて、はじめて「成年」になるとされ、この天羽衣の脱着が、天皇の心身に呪的な変化を起こさせる重要な秘儀とされます。
そして深夜、天皇は悠起殿・主基殿に於いて天照大神と共寝共食の秘儀を行い「天皇霊」というカリスマ原理ともいうべき神格を得て蘇生されるとのことです。
私たちは、時代と共に変貌をとげてきた律令国家とその末裔でありますが、今日、大嘗祭のすがたを見てみると、日本のすがた・かたちが見えてきます。そして1300年の間、その主役は初代神武天皇から4代前の高祖母のヒルメムチ・天照大神に辿り着きます。
日本文化の大きな塊のひとつが皇室ですが、この度の天皇即位の一連の儀礼を見ていると、まさにその感を強くします。そして、日本人の人間観は平等ではなく、公平であると改めて思います。
そして、日本人で良かったと・・・。
この8月に大嘗宮の敷地を見学してきました。
そこは90メートル四方の敷地に大小約40棟の建屋で構成され、その中でも、天皇が湯あみと着替えをする廻立(かいりゅう)殿、その年に収穫された稲の初穂を供える悠紀(ゆき)殿と主基(すき)殿は、合わせて主要三殿と呼ばれ、古来の木造様式で建てる準備をしていました。
大嘗宮はこれからの行事の後、解体されます。その前の11月21日から一般公開されるといいます。
私は、令和日本人の造った美の粋を拝見したいと思っています。
写真: 伊勢神宮内宮正殿
下 令和の「大嘗宮」 Webヨリ