日本のすがた・かたち
大空に
若葉青葉の気やのぼり
稚児やそだてと鯉のはためく
川面が桜の花びらに覆われていたと思う間に、若葉が照り映え、緑の風が渡っています。
春から立夏へのこの時期は冬にはなかった虹が姿を見せ始めます。潤い始めた日本列島です。
この「虹始めてあらわる」候、よく歩く散歩道沿いの家に鯉のぼりを見ます。
今年は小さな鯉が一匹増えて、家族が五人になったことを知らせていました。
江戸時代、幕府が定めた式日の五節句のひとつ「端午の節句」は、男の子の健やかな成長を願って、甲冑や武者人形などを飾り庭前に幟旗(のぼりばた)や鯉幟を立ててその成長を祝います。アヤメの節句、菖蒲の節句とも呼ばれます。
私の子どもの頃の思い出は、髭もじゃの鍾馗(しょうき)大臣とマサカリをかつぐ金太郎でした。何でも怖い顔をした鍾馗さんは疫鬼を退け、魔を除く神様というもので、その人形の前で大きなボタモチを食べたのを覚えています。親たちが子どもの成長を願って続けてきた良き風習といえます。
男子は女子に比べ腕力以外に勝るものは無し、の感がある昨今ですが、それは研究を待たずに昔から暗黙の内に了解されていたことで、男の大半は納得しているものといえます。歴史上、我が国で一番偉い御人は女子の「アマテラスオオミカミ」。男ではない事実がそれを物語っています。
体力や腕力に秀でた男は戦いの場で活躍してもらわなければなりません。強い女子は「やさしく、しとやかに」と、か弱き男子は「つよく、たくましく」と、生命遺伝学的にも納得のゆく教育方針です。
かの聖徳太子のいう、「和を以て貴しと為す」の本意は、どうもこの力のバランスをいうのではないかと思います。和することこそが一番互いの特性を生かすことだと教えているようです。
菖蒲の花を尚武にかけて、男よ強くなれ、と励まし続けてきた先人の知恵は、この先も両性が続く限りのこっていくものと思います。
蒼穹にはためく鯉のぼりをみると、亡き父母を思い出します。