日本のすがた・かたち
2008年9月3日
花鳥風月
雨降れば雨に聞きたし
風吹けば風に問いたし八十島の美を
「この江山の洵美なる、生殖の多種なる、これ日本人の審美心を過去、現在、未来に涵養する原力たり」
地理学者志賀重昂が「日本風景論」(明治27年)の中に書いている一文です。我が国の美しさと何が将来にとって大事であるかを説いています。日本の国土は生殖が多種で、我々の審美心をも養う原動力となっているといいます。またこの風景を変えてはならないともいっています。
里山、雑木林、棚田、水郷、干潟、人と自然の共生などの文字を見ることが多くなった昨今、この言は重く感じられます。
我が国の国土の約七割は森林に覆われています。外国で、かつてオアシスの国といわれたアフガニスタンの荒れ方などを映像でみますが、日本という国は、いかに農林水産資源に恵まれた国か、と改めて思います。江山の洵美、生殖の多種なる所以です。
生まれ生活する地域で産するものを食べ、地域の交流を食と祭事で繋げてきた。そして他を思いやる作法や習慣。日本人の生活の原点がこの辺にありそうな気がします。
食の安全と供給を脅かされている昨今、私は先人の生活の原点を思い、日本の美しさに思いを巡らせています。
2008年9月3日