日本のすがた・かたち
2019年4月30日に今上天皇が生前退位され、翌日5月1日には皇太子が新天皇に即位されます。平成の次の新元号が2019年4月1日に発表されますが、いよいよ日本の新しい時代の幕開けとなります。
初代神武天皇から126代目の新天皇の誕生は、昭和、平成、そして新しい年号と共に、改めて日本の歴史を訊ねることになります。
山本健造が遺した「飛騨の口碑」によると、ホモサピエンス(新人類)が地上で暮らし始めた頃、日本列島にも先祖がいて、その始原は飛騨の淡山(乗鞍岳・飛騨大地)としています。
私は、我が国の木造建築の始原の調査から「飛騨の口碑」に興味を持ち、考古学や遺伝学、歴史学を頼りに山本原日本人説を日本国史の柱としてきました。その説は、発掘されている石器から、20万年から37万年前から日本列島には原日本人が住んでいた、というもので、信にたるものでした。
山本健造の最大の功績は、肇国の歴史を明らかにしたことで、「古事記」や「日本書紀」の国史を時の権力者の都合の良いように改編したところを糺し、記紀の紀元前1世紀頃の出来事を神話仕立てにした理由などを挙げています。
中でも紀元1世紀頃初代神武天皇(サヌ命)が即位される際に皇統命の辞令「位板」(くらいいた)が大和のサヌ命に授けられ、晴れて神武天皇として即位されたと口碑に遺ることを明らかにし、歴代の天皇が即位式に臨む際、岐阜県高山市にある位山の「イチイの木(一位の木)」によって製作された笏木(しゃくぎ)を使われてきたことの意義を説いています。(笏木とは神社の神主や斎主が持ち儀式を行う薄い木の板のこと)
飛騨位山の一位の木で製作される笏が、歴代の天皇の即位式に献上されてきたのには理由があります。紀元前3~5世紀頃から続く、35代のヒルメムチ命(天照大神)などの皇統一族の亡骸が埋葬されている御陵がその位山であるということです。39代ヤマトイワハレ命(サヌ命・神武天皇)も天の岩戸といわれる大岩に祀られているといわれます。
私は、日本文化の大きな塊は神道、日本仏教、皇室、茶の湯にあると思っています。
その皇室に営々と伝わる笏木は飛騨の位山に生える常緑針葉樹の一位の木は、我が国の真の歴史をものがたり、皇統命・皇室のふるさとが飛騨であることを伝えています。
即位に合わせて行う大嘗祭は、2019年11月14日から15日にかけて挙行されるといいます。
今回の大嘗宮は少し仕様を変えるようですが、東に萱葺きの「悠紀殿」、西に「主基殿」が木肌を剥かない櫟(クヌギ)で造られ、周りに芝垣が巡らされます。殿の中にはそれぞれ北側の「室」と南側の「堂」に分かれ,北側には「褥(しとね)」「衾(ふすま)」と呼ばれる寝所が像置かれ、東側に天照大神が降臨する神座と対向する天皇の座がしつらえられ、そこで神人共寝共食の秘儀が行われるといいます。
この大嘗宮を造るところの木を切ったり、草を刈ったりするのは悠紀国、主基国のいわば神人(じんにん)といわれる祭祀・神役集団とされ、この度の建築は、皇居東御苑の旧江戸城本丸跡の広芝に、大手建設会社5社が共同で担当しています。
ITが席捲する現代にあって、木の国ならではの文化といえます。
木の文化は,先人の叡智が結晶しリアルに躍動しています。
写真:平成の大嘗祭で皇居・東御苑に造営された大嘗宮