日本のすがた・かたち

2018年10月8日
縄文の風

(縄文土器が眼の前に…)
(火焔土器…圧巻の美しさだ…)

以前から縄文時代に気を惹かれていることもあり、先月、上野の国立博物館に出かけました。
勿論、世界最古の土器群を拝観するためでした。

展示は古代の外国土器との比較もなされていました。
現在、世界最古といわれているのが、青森県大平山元(おおだいらやまもと)遺跡出土の模様のない無文土器で約1万6500年前のものといわれています。その後、1万4500年前頃には、粘土のひもを貼り付けた「隆線文土器」が生まれ、全国に広がって行きました。

縄文の火焔型土器は他国のものより時代が遥かに古いのに、この圧巻の美しさは何だろう、と、この1か月の間考えていました。

教科書で学んだ文明観では、石器時代の人類は狩猟・採集による移動生活を送っていて、約1万2千年前から、世界各地で農耕や牧畜を始め、定住生活ができるようになったとされ、文明はこの頃から始まったというものでした。
ならば1万5千年前から始まったという我が国の縄文時代は、学説の文明観の範疇に入らないことになる分けです。我々の先祖は、既に狩猟や採集をしながら定住生活をしていた世界最古の文明ということになります。しかも土器は、文明のレベルの顕れといわれます。

 

日本列島の自然の一部として暮らしてきた先祖は、四季折々の豊かな食物に恵まれ、争いをせず、国連のいう「持続可能な開発」(Sustainable Development)を実践していた「奇跡の民たち」といえそうです。
農耕・牧畜は狩猟・採集よりは進んだ文明段階であると考えられてきましたが、現代に至ってメソポタミア、エジプト、インダス、中国の黄河流域がみな砂漠化している事実を見れば、農耕・牧畜が自然破壊を伴っていることがよく分かります。

 

縄文は「円の文明」ともいわれます。
当時の竪穴住居は平面が円形で、円(車座)となって生活していたといいます。分け隔てのない人の円(縁)を感じさせます。住いはその時代の精神や生活様式を現わし、文化文明の結晶ということになります。建築が人間の生活環境と文化をかたちづくる基本的要件とされる所以です。

縄文期の建築に想いを馳せ、私は昭和・平成の建築造りを仕事としていることを実感しています。

縄文時代に生きた人々が自然の中で順応して生きた健やかさも…。
自分が縄文人の末裔であり、日本列島に生まれたことも。

   国博に縄文の美や横溢す 円かなる風そよぐ我にも

 

 

写真:縄文中期「火焔型土器」伝新潟県十日町信濃川付近(馬高遺跡)出土
紀元前3000年
下:縄文後期「猿形土偶」伝埼玉県さいたま市(旧岩槻市)真福寺貝塚周辺出土
紀元前1000年

 

 


2018年10月8日