Sのプロジェクト
1.「空想・想い描く」-3
茶の湯のステージ造営の構想は上空何万メートルから始まっています。
この地球上にある日本という国の、静岡県東部の三島市で富士山が北に位置し、西に川が流れ、三嶋大社に近い所。
そのような土地があるかどうか10年前は分かりませんでしたが、構想を立て始めた頃、富士山を観ながらそぞろ歩きの時、「ああ、ここがそうか」と気がつきました。
北に富士、東に箱根から連なる十国峠、日金山、南に開け、西に川。
「この周辺なら造営できるかもしれない」
そう思うに至り、土地の調査を始めました。結果、幾つかの条件をクリア―すれば取得可能であることが分かりました。
思いは続きます。
基本構想は三ヶ月ほどでまとまりましたが、実践のための施策を講じました。いつものことですが、設計構想を実現させるための重要な関門です。
まず、自分の考え方が天地自然の理にかなっているのか。
私が思いを新たにしたのは、本物の「木の建築」ができるのか、ということです。
昨今は世の流行に迎合するかのように、木でなくても良い所に木を使い、これで林業が発展し、和の文化の発展に寄与するというような、大儀まで掲げているのを見かけます。新国立競技場は木材を見せ、日本文化のエッセンスがここにあるという類のものです。
また、燃えない木を開発しようとする試みも笑止千万というものです。
材料として燃える、腐る、の二大欠点を克服しようとする努力は、経済的利を得るためのもので、薬液注入などの考え方は生きている木に失礼なことです。
木は燃える、腐るのが普通であって、先人はその特性を生かし、環境や人間に相応しい使い方を提案し実践してきています。過去4万年の蓄積がそれを立証しています。
近代の鉄骨や鉄筋コンクリート材の目覚ましい発展といいますが、高々二百年ほどのもの。つまり列島に住む人たちの生存にかかる叡智の蓄積は木造建築にあり、その優れたところを継続し継承することが建築家の責任でもあると思います。
現代の木造建築は木造にあらず。本物の木造建築を考えるのが天地自然の理にかなうというものです。
これが構想の全体を覆おえるように、まず、都市計画法、建築基準法など建築関連法のチェックに向きあいました。
「考えを深め」、「教えを請い」、「計画を創る」。
先人は「考える」、「聞く」、「創る」という言い回しでそれを教えています。
写真:柱の継手「独鈷組(とっこぐみ)」日本独自の技