Sのプロジェクト

2019年9月1日
愚直であること

若かりし頃、愚直という言葉はあまり好きではありませんでした。
なんだか要領が悪く融通がきかない、創造性とはかけ離れたイメージだと感じたからです。
“最低限の労力で成果をあげることができる人”のような利口さに憧れていたのかもしれませんね。

年齢を重ねていくと、良い意味でも悪い意味でも、自分の能力の限界やスタイルというものが徐々に分かってきます。
私の場合、設計という仕事において、人並みになるための唯一の方法が愚直にやることだと悟るようになりました。

「三島御寮造営」という、かつて経験のない壮大なプロジェクトの中で、自分に何ができるかと自問自答したとき、ふとそんなことが頭に浮かんできたのです。
このプロジェクトは、小手先の器用さやごまかしは通用しません。
楽な方、小狡い方に流れてしまわないよう、愚直にやっていこうという思いを新たにしました。

ただし、“愚直であること”は、あくまでも仕事上のスタンス。
プライベートでは、要領の良さと効率化(=手抜きと大雑把)を重視しております。

望月美幸(もちづきみゆき 建築家・JIA会員)

 

写真:上 仁和寺勅使門
下 Sのプロジェクト シンボルマーク「木造のUFO」

 


2019年9月1日