Sのプロジェクト

2019年8月19日
本物とは何か?

 

「茶事を知らないものに茶室の設計はできない。」
太田先生が時折口にされる言葉です。

最近時間に余裕があるせいか、「本物とは何か」と考える時があります。
あの作品は本物だ!
あの人こそ本物の○○だ!
この技術は本物だ!
これらの言葉は頻繁に耳にするわけで、この世の中本物だらけということになります。
ただ、己の心に真摯に問いかけたとき、
人生において“本物だ!”と心から実感したことは何度あったでしょうか。

「本物だと思う」ことと「本物だと分かる」ことは、大きな隔たりがあると感じています。
巷にあふれている言葉群は、「本物だと思う」に近く、主観的で軽さがあります。
分かった風に言われるほど、分かっていないことが露呈されることも多いですね。

一方、「本物だと分かる」ためには、その人の教養や知識、体験や見立て、そして人間性まで問われるような総合的認識力が必要です。

そんなことを考えていくと、冒頭の太田先生の言葉は、
「本物とは何か」という命題に非常に通じるものがあるということに気が付きました。

私自身はというと、恥ずかしながら「本物だと思う」ことばかりです……。

 

望月美幸(建築家・JIA会員)

 

 


2019年8月19日