新之介文庫だより

2009年6月19日
新之介文庫開設記念出版『於八於五』

新之介文庫からのお知らせ
7月中旬 里文出版より発売が決定しました。
句歌集 『於八於五』(おばおい)  
俳句 赤松孝子(俳人)   和歌 太田新之介(建築家)   解説 長津 喬(俳人)
HP-115.jpg文庫長の佐々木です。
発刊を記念いたしまして、当文庫では、太田新之介氏のサイン入りの頒布をいたします。
お申し込みは、下記あて お問い合わせ頂きます様、お願いいたします。
(当文庫扱いは200部限定 関東、東海地方の書店でもお求めいただけます)  
お申込みはこちらへ
メールアドレス  
group@wanococoro,org

新之介文庫
佐々木広志 宛

ご氏名・ご住所・お電話番号・お届け先・申し込み冊数、サインの宛名を明示のうえ、ご連絡ください。
折り返し、金額(送料実費にて)・銀行振り込み先のご案内をさせていただき、お手元へお届けいたします。
四六版/ 上製  カバー4C / 本文152 ページ
頒布価格・1600円 (税別)
新之介文庫は、このあとも 多種にわたり、ご紹介をしてまいります。
今回の、句歌集は 今までに無い・・・・・・三部作だと 思います。
                                                                                                                                                 
coverura-1.jpg 「あとがき」         
かれこれ三十年になろうか。
叔母赤松孝子から句作の幾つかをメモで渡されたことがあった。
以来、年賀状や折にふれて会う毎に、その俳句を目にするようになった。何年かそのようなことが続いた後、句中に詠み込まれた色彩や心象風景の幾つかが、私の脳裏に焼きついていることに気づいた。
句作は叔母が十七文字に胸の奥に潜む本音を託したもといえるが、その句風には、私の思う和歌に通じたものがあり、極短の俳句では余り期待できない優美さが横溢していると感じていた。そして後年、叔母の遊(すさび)心が私の想像力を掻き立てる源泉にもなっていたことを知った。私は何時しか叔母の句に魅せられ、文芸の原点を句中に見るようになっていたのだった。
孝子は六十歳の時、句会「獺祭(だっさい)」同人となった。
それから二十数年の間、三千数百の句作をなし、同人誌の巻頭をかざり全国紙に掲載されるなどして活躍していたようである。
それを最近まで私に言うことはなかった。今回の出版を通して知ったことだ。
『自分の小さな思いをそのまま句にしてきただけ……』
さもあらん、と得心のいく句作への姿勢だった。(中略)
和歌は下手ながら十五、六の頃から詠んでいた。
母に影響を受けたと思っているが、無論、歌人のものではない。後年、和歌が敷島の日本のかたやかたちを顕わして余りあるものだと知ってから、独り詠むを楽しみとしてきたものだ。
私は今風の短歌を好まない。
明治以降、文芸の一分野として確立された短歌は、作者の心情をそのまま詠うがよしとされているが、短歌は雅趣が欠ける上、日本人が保持してきた和心が薄く、表現の奥行きと幅が小さくなっているようである。また、平安時代より京都の御所を中心としてきた「古今集」や「新古今集」に内在する形式美や伝統美というものがなく、詠む各々の個人感情の吐露が優先し、和歌の特色である類似性や架空性に欠けるうらみがある。(中略)
約千年、歴代の天皇周辺が営々と伝え、江戸時代に公家から諸国の大名、庶民に広がった和歌の形式美は、日本の伝統文化の基であり今日に至っても尚、その美しい言葉とともに在る。 
また、和歌がもつ類似的な表現と、実際にはないことを歌にする架空性は、読む者に誤解を与えることも多いが、それが日本人の好む装飾的心情であり、和文化の真髄ともいってよい。今日流行りのニューウエーブ短歌なるものにその雅をみることはできない。
この二人の不思議な組み合わせに解説を付けてくれたのは、畏友、長津喬君である。彼は土木技術者で全国を歩いた修験者のような人物であるが、俳人でもある。「木炭舎」という俳号をもち、若い頃から句作を人生の道連れのようにしながら、折々の生の表白を堪能してきたようで、私はその句を「慈眼の句」と名付けている。それは独特な表現で今という時間を詠みこみ、幾層にも心象の重なりを持ちつつ背後に優しさを秘めた句である。
「おい、何、和歌と俳句の解説だと!」
そこをたっての頼みと口説いたのがこの本の解説になったというわけである。
解説は有難く深謝するところと、和歌は誤解の文芸といわれるところのもどかしさを両方味合わせてもらうことになった。結果として彼は私の和歌を題材にし、彼自身の人生遍歴を結晶度高く吐露してくれたものと解釈している。
私は戸惑いながら解説の重大さに気付かされはしたが、彼の添えてくれた文が心地よく、歌題を伏せたことで秘かに笑える有難さも味合わせてもらった。また俳句と和歌が句歌集として出版されるのは稀で、この種の私本的解説も類例が少ないと聞き及んだが、乙な内容のものになったのではないかと思う。今はそのまま何もかも委ねたことを嬉しく思っている。心より厚くお礼申し上げたい。(後略)
2009・5 上弦の日に  太田新之介
(あとがき 中略・抜粋)
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里文出版より、各地の書店に配布されたチラシを掲載します。
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2009年6月19日