新之介文庫だより

2020年1月16日
近詠・句歌都々逸64

 

松も過ぎ 露地の掃除の隅々に 小さな春の 訪れを見る

 

この道を このまま行くか 道半ば 夢の欠片を 集め集めて

 

獅子王と 名の付く白き 大椿 映るは丹波 我れが花入

 

如月の 茶事に掛けるか 清巌の 一行の書に 託す存念

 

一級の 定期講習 八時間 疲れ知らずも 次は如何と

 

日々に 変わる法規に 戸惑いて 建築の道 曲がりくねれり

 

山月の 庵を想い 浮かべては 幾世も遺る ことを願いぬ

 

箱根なる 山月庵に 降れ雪よ 美し姿を 守り清めよ

 

選ばれし 庵(いお)の守りの 夫々の 末に幸あれ 明日を夢見て

 

木の国に 生まれ住みては 木を忘れ CO2で 絶滅の途に

 

古の 木の建築に 宿るのは 先祖の叡智 そして真心

 

初春に 啜る茶の香の 清しさは 紫匂う 萩の陶(すえ)なり

 

焼物を 君と一緒に 作るとは 思いもかけぬ新春(はる)ぞ嬉しき

 

新玉の 年の始めの 窯出しに 君と連れ立つ 富士の山裾

 

あの頃を 思い起こせば 夢惑う 紅き唇 白き襟足

 

火の神に 身を委ねては 変身す 陶の姿の 尊きを観る

 

縄文の 土器の姿を 写し焼く 窯より出る 我れが水指

 

窯出しや 丹波唐津に 萩の陶 美し容ぞ あれもこれもが

 

真心は 何より優る 力にて 神仏の加護 知らず付き行く

 

荒魂の 年の始めの 不二仰ぎ 我にこの道 行かせたまえと

 

暁の 東の山に 雲ひとつ 初日を仰ぐ 君は頬染め

 

写真: 古帛紗「紅地狩鞍文錦」 自作

 

 

 


2020年1月16日