曼珠沙華 咲いて古里 懐かしむ

 
　冬瓜の 旨さに憩う 有難さ

 
　面白き 爺三人の 月擬き

 
　新しき 仏の教え 樹の緑

 
　鳴くまでも ないか今宵の 月明り

 
　コオロギよ 鳴くな我も 淋しけり

 
　涅槃図や 縁を眺む 月ひとつ

 
　いま一度 逢瀬を願う 黒椿

 
　百合の花 樹々の向こうに 夜半の月

 
　黄昏て 幾つ路地裏 溢れ酒

 
　邂逅は 別れの始め 薄紅葉

 
　茶を点てて 露地一面の 昏れなずむ

 
　新しき 朝の光に 淡き月

 
　池之端 古き館に 造り跡

 
　不忍の 蜂巣の中に 華ひとつ

 
　思い出は 不忍の路 蓮の色

 
　七絶に 詠んで往時を 辿りけり

　心越の 涅槃図我を 強震す

　宇宙 曼荼羅 入滅図

 　露地に立ち 茜の雲に 又も問う

　上弦の 色で笑顔を 思い出す

写真：旧岩崎邸（台東区池之端）にて

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