新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
長らくお待たせしました出版日のお知らせです。
3月の出版予定が大幅に遅れ、予約を頂いている皆様には大変申し訳なくお詫び申し上げます。
2月末に表紙のデザインが決まり、最終原稿が上がったところで、著者から待ったがかかりました。
内容に矛盾があることが分かり、一部の文章を書き直すことになりました。
私たちも何度も読み返していて、編集担当も疑問に思っていなかったところが盲点となり、文章をもう一度最初から組み直し、再校正することに。
著者が20年の歳月をかけて書いてきた伊勢神宮の建築史と創建の謎は、何度読んでも胸が躍りますが、300頁という中身を精読する作業は難しいものでした。
「もし我が国で最も魅力的な建築は、と問われたら、私は躊躇することなく伊勢神宮内宮正殿をあげる。その魅力は冬至の未明の空に昇る朝陽のような神々しさ、類のない木造構造物の美しさ、そして縄文期からの歴史をはらむ圧倒的な存在感にある、と。
天皇の社として特殊な地位と、幾重もの囲垣の内に静かで圧倒的な力感をたたえている宮城は、建築の設計監理を仕事とする、わけても木の建築を主たる業務に据えている私にとって重要な位置を占めてきた。神宮が日本の神道神殿の原形であり、木造建築の究極のすがたであると学び、神宮のイメージを木の建築を思考する原点と捉えてきたからだ。
神宮はいつ創建建立されたのか、記録が残っていない。『古事記』(七一二)には、一〇代崇神天皇の皇女が伊勢に仕えたと記しているのみで、いつ建立したかの記述はない。
八年後に編纂された『日本書紀』(七二〇)には、伊勢の神宮は一一代垂仁天皇の時代に建てられたとあり、双方の内容は食い違う。また日本書紀には、四一代持統天皇が六九二年に伊勢と志摩を訪れているとあるが、このとき、天皇が神宮に寄られたという記録がないため、この時期にはまだ神宮が建立されていなかったとも解されている。……」
以上のような「はじめに・瓦解した伊勢神宮のイメージ」の書き出しから始まる1300年の物語は、きっと読者を大和まほろばの奈良時代にいざなうことでしょう。
本日ようやく出版日が決まりました。
遅くも6月末には皆さまのお手元に届くと思います。
著者のサイン本を望まれる方はお申し出ください。予約の200部は特別装丁となっております。
これからも宜しくお願いいたします。
写真 御神木を伐りだす神宮の神事