新之介文庫だより

2014年5月7日
『水晶殿改修記』-49 名蹟

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新之介文庫の佐々木です。

『水晶殿改修記』も回数重ね、次回で50回です。

平成24年10月から始まりましたので、1年半ほどの連載となります。

著書『水晶殿』にありますように、「水晶殿は小さくて巨大な建築」だということがよく分かりました。

建築家・太田新之介が6年の歳月をかけて取り組んできた平成の大改修工事。

その設計監理の精神の柱となったものは、「名蹟」でした。

 

太田は熱海の「水晶殿」や箱根の「山月庵」を、いずれは国の宝となり得る名建築と位置づけ、これを「名蹟」として施主側に提案しました。

ここにいう「名蹟」とは造営主である岡田茂吉翁の手がけられた設計による建造物ということからでした。

他にも茂吉翁の手がけられた建築はありますが、まずこの二つは特別のものとしました。

 

「この名蹟は、いずれ必ず世に広まるから、国の宝となるものだから、伊勢神宮の式年遷宮のように再生保存させていく必要がある。」

太田はこのように発言していました。

 

大勢の方の寄進によって再生した「水晶殿」は、その名蹟の象徴的な建築となりました。

「いつか、何代か先の孫たちにとって、この名蹟が心のともしびとなる・・・」

このようにも話していました。

多くの工事関係者が心血を注いて再生させた名建築は、この後100年経ったらまた大改修の時を迎えることになるようです。

「その時に縁のある次代のひとたちのために、詳細な設計思想や図面、施工記録を遺すように努めよう。」

 

名蹟再生の仕事に縁のあった私「、「有難い」の一言でした。

次回の50回をもって改修記を閉じさせて頂こうと思っています。

 

太田はこれから「水晶殿」についてお話する機会が多くなりそうです。

 

 

写真  平成23年1月21日(金) 施主担当者チーム、設計監理、施工者が一堂に集まり無事の完成を願った

 

 

 


2014年5月7日