新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
円形ホールの背面の腰壁はイタリア産の大理石で仕上がっています。
その中心にはマントルピースがあります。
改修工事にかかる前までにも、いろいろな事情があったものと思われますが、この大理石には、自然の輝きというか、艶がないようにも感じられた。
調査の結果、石の表面に薄く補修が施されていた。
解体に着手する際、「この大理石をなるべく再利用できるよう、取り外しには十分気をつけるように」、と建築家より指示があった。
創建時の名残をとどめようとする結果だった。
「使える材料は、造営主の名残をとどめるために再利用するから、古材を断りなく破棄しないように」と太田は工事担当者に頼んでいた。
創建当時は戦後間もない頃、よくぞこのような大理石が入手できたものだ・・・。そして今回の改修工事でも、その奇跡は再び訪れた。
同じイタリア産の大理石で色を揃え、新旧の材料で仕上げることができることになった。
担当したのは、竹中工務店の協力会社の㈱TAKAO岐阜流通石材工業の平井さん。
平井さんはじめ工場のスタッフが、再利用する材料と真正面から取り組んだ成果でした。
何度も岐阜に通いました。
色調、ふの入り具合、質感、連続性など細かい検査の連続。
この作業は正に、建築家の要請に機敏に反応した結果でした。
円形ホールのイメージがこれで固まった瞬間でした。
新旧の大理石が何処に使われているのか、現場を見ていた私にも分かりません。
太田は、「造営主がこれで良し、と仰って下さっているような気がする・・・」と。
設計監理のすべては、この結果を目指している。
写真 上 旧水晶殿に使用されていた大理石
中 新旧材を組み合わせ、どこにどれを使うのか決めている
下 現場のマントロピース周りに貼った状況