新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
水晶殿改修設計に先立つ2008年8月に、管理部から既存の屋上梁に大きなクラック(亀裂)があるとの報告があり、依頼を受けて11月に急きょクラックの調査をすることになった。
結果、屋根だけでなく構造体全体に問題が生じている可能性があることが予想された。
調査を指揮した太田は、「コンクリートの劣化が予想以上に進んでいる。建物全般の再チェックが必要になる」と言った。
屋根全般のクラック調査をしてみると、重度の爆裂クラックが多数発見された。
その個所は57ヶ所に及んだ。
調査による総合所見(2009年1月)によると、
『本調査を考察すると、屋上に多く確認できる爆裂クラックは、建設当時の施工不良による強度不足から生じているものと、漏水、経年劣化(耐用年数50年程度)によるものが主原因とみられ、現在、崩落につながる状態が進行していると判断されます。
また、異常の出ている床の水平変形(床沈下)の原因は、盛り土地盤の沈下によるもの、屋上梁の常時撓みによる梁先端の下がり、経年変化による劣化、屋上の過荷重、品質の悪化による屋上からの降下、が、共に連動しているものと考えられます。』
そして、次の見解を報告している。
1.屋上円形部分の約3分の1に、構造的問題が生じている
2.中規模地震(震度4~5)で、屋上部が崩落する可能性が高い
3.このままで推移すると、短期間のうちに自然崩落も考えられる
その結果、当初の設計範囲の不同沈下部分の是正と、内外装の改修、設備の改修から、構造体である屋根の梁、スラブの解体まで範囲を広げることとなった。
太田は、「工事が進み内装解体後の再調査の結果によっては、柱や基礎まで解体する全改築になる可能性もある」、と聖地運営プロジェクトに報告した。
約60年という歳月は予想を超えて改修を促す要因となっていたのです。
ここから水晶殿の改修は大きく動いてゆくことになります。
続きは次回にて。
この頃の太田の詠んだ歌
つつじ山 春立つ海に浮かびけり われらは山の声を聴くかと
写真 上 旧水晶殿屋上のクラック状況
中 立入禁止のお知らせ
下 内部天井裏のスラブの剥がれ状態
トップページ プロジェクトによるクラック現場視察