新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
上棟式が済んだ後、工期が少なくなっていることから各工事の検査が頻繁に行われた。
中でも太田は、木材を選ぶ検査について厳しかった。
内部仕上げ材は「タモ」が主であった。山と積まれた中から選び出すため時間がかかった。
「それではまだ使えません。もう少し目の詰んだものを出して下さい」
「杢目は中杢のもので…。品の良いおとなしいすがたのもものを」。
太田が何度も口にした言葉でした。
見ているとそこまでこだわらなくとも思えるような妥協のなさ。
木材検査は2月6日名古屋で終わり、加工について様々な指示をだしました。木の良さを生かすために、削り方まで細部にわりました。そして現場で板取り、加工段階で再度検査を実施。仕上げ寸法を考慮した板取りとし、木表の削りは最小限に留めるよう伝えました。
「木の持つ個性と美しさを出すように」と。木の板は木表(きおもて)側に反るのを計算に入れての加工方針でした。
円形ホールの床下の木組みも始まります。
ホール中央には創建時に使われていた古材が再利用されて使われることになりました。
「先人の名残をとどめるために…」と太田は言っていました。
その古材の一部が完成後に「炉縁」という茶道具になって使われることになるとは、誰も想像していませんでした。それは箱根、熱海、京都の聖地で使われるようにとの配慮でした。
梅の花が開くころ、いよいよ内装工事も進みます。
写真 上 控之間の飾り棚板の選定検査
中 上棟式に使用した棟材を控之間中央の天井裏に納めた
下 円形ホール中央床下に旧用材を使用した