新之介文庫だより

2013年12月3日
『水晶殿改修記』-40 エッチングガラス

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新之介文庫の佐々木です。

控之間と円形ホールの展望室の間にはめ込まれた「エッチングガラス」。

円形ホール側からみると、マントルピースの上部に付いている、16枚のガラス。

この文様のデザインが決まり、その製作が始まりました。

そこは東京下町の墨田区にある工場。

この仕事は職人の手先の動きと、感性に依る、正に職人芸。

圧力をかけたノズルの先端から極微細な研磨材を噴出し、ガラスを削り、しかもその溝の断面は、丸い凸面とし、サンドブラストという技法のなかでも、高水準の仕事。木造の社寺建築にある彫刻技法と同じような真中を丸く盛り上げたもの。

太田は何度か職人たちの作業を見てから、若い池田さんという方に決め、仕事を託しました。多分エッチングでは日本初めての技法とのこと。 

控之間から見ると周囲の光を集め、その陰影は柔らかく映ります。

創建時は設計図に具体的には何も示されておらず、造営主が自ら造ったもの、そしてゆかりのある建物から探って行くなど、今回の改修工事でのデザイン決定までは、多くの時間が費やされました。

水晶殿では細部にわたる意匠のひとつひとつが、建物の品格を保っているようです。

 

(写真 仄かに浮かび上がるエッチングガラスの瑞雲文)

 


2013年12月3日