新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
照明工事の担当は、東京の株式会社YAMAGIWA(ヤマギワ)。照明製作のトップメーカーです。
ヤマギワには我が国の文化財的建築の照明をいくつも製作してきた製作チームがあり、国際照明学会の照明デザイン受賞の常連です。
太田は「水晶殿の照明は特別の意味をもっている。」と計画当初から考えていて、ヤマギワの開発チームの協力が必要だとしていました。
他の4社とともに、特命工事に指定して頂くよう施主側に提案していました。
円形ホールの天井に設置されたライン照明はLEDを使用。この月のデザインと思えるラインは、難しいクロソイド曲線。
空調の吹き出し口を取り込んだ円形のもの。製作の過程では、曲面を滑らかに表現する工夫を加え、結露にも配慮。
円形ホール天井にぴったり納まるまでには何度も現物模型を作りました。
太田は何度もダメ出しをして、周りはここまで厳密に作るのかと驚いていました。
そして「控之間」のあかりは、この建物の中心的存在。
控之間は造営主が60年前に宿泊されたお部屋で、水晶殿の中央カナメの位置です。また、救世会館からトンネルを通り水晶殿側にでる中心線がこの控之間の中心に。何か意味があると誰でもが思う空間です。
照明はこの室のために開発しなければならない。
太田は何度もデザインスケッチを繰り返し、実物大模型はヤマギワで製作。
蔦と唐草をモチーフとした意匠は、高岡市の能作で真鍮鋳物で作られました。能作さんは錫鋳物で世界的な企業です。難しい仕事でした。器具の下面は鳳凰をデザインしたエッチングガラス。墨田区の町工場での製作。
玄関ホールと廊下のあかりがそれを引き立たせます。このペンダント型のあかりは「宝珠」と名前のついている、「禅のあかり」のハイバージョンもの。飾り房は京都の岡本啓助氏の作品で、絹製で格調が高いものです。
水晶殿のあかりは、すべてが意味を込めて作られている。これは、今回の改修にも当然活かされ、基本構想の段階から建築家とともに、一緒に考えて造り上げていくスタイル。この手法は簡単に見えて、実は長い時間と、多くの工程があり、多くの人の手を経て完成にこぎつけることもあり、誰にでもできるとは思えないものです。
これらを製作したのが東京下町の職人さんたちです。墨田区にある町工場は造営主のご生誕地近く。ご生誕地の設計も太田が手掛けている。何かご縁の深いものを感じます。
担当されたヤマギワの佐藤、田附、営業の堀田、鋳物の能作、名工清水と池田の皆さまご苦労さまでした。
(写真 上 夕暮れの水晶殿 円形ホールライン照明 控之間照明 下 ホール、廊下照明)