新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
建物の内外仕上げを担当する左官工事は、熱海の隣の湯河原町に4代続く、株式会社長田左官工業。
最近の建築では、左官工事そのものの仕事量が少なくなる中で、職人の確保も難しい状況です。
水晶殿の仕事は、小規模の建物ながら、濃密な内容に溢れています。
室内の壁、天井は本漆喰塗。円形ホールの天井は、全国から長田さんが声をかけて集まった職人が、呼吸を揃え一気に仕上げる。しかも、事前には下地の木材の選定など、木工事の職人とも協調しながら・・・。
全体工程の中で、乾燥時間の確保は品質に影響するため、そのバランスを取らなければならない。
したがって、左官の仕事は、この建物の中心的存在と言えるかもしれません。
建築家は、長田さんの従前から、仕事に対する取り組み姿勢と、研究心を認め、計画の段階から参加をしてもらえるよう施主側に提案していました。
外壁の仕上げ材にはガラス粒材を混ぜているが、この材料の選択と、見本作り。この粒を「洗い出し」という技法で仕上げる。これが自然光を受けると輝き、まさにそれは水晶の輝き。
この材料による仕上げの上品さを、すでに建築家は見抜いていて採用した。
内部では、天井周りの蛇腹のデザイン。決定までに何度も試作を重ね、独自の仕上げを創作していく。工夫を加え、この仕事に出会えてよかったと思う瞬間にたどりつく。
私はいつも現場で見ていて、左官仕事は法隆寺の時代から続いていて、現在も仕事の内容はかわらないことを不思議に思っていました。
水晶殿は左官工事が主役のようです。
(写真上 左官工事外壁仕上げ 下 屋根も左官工事 )