新之介文庫だより

2013年2月12日
『水晶殿改修記』-15 施工業者選定

HP-1002.jpg

 

新之介文庫の佐々木です。

2010年8月に設計図が出来上がりました。

改修工事の設計は難しいもので、特に水晶殿は並みのものではありません。設計陣は想像をめぐらせ、造営主の意図に近づく作業を何度も繰り返しました。それでも建築家は満足していません。改修設計にともなう想定が定まらないのです。

聖地運営プロジェクトでも検討を繰り返し、解体工事を始めてからの改修範囲拡大が予想されることを確認しました。「もしかすると、全面改築になる可能性もある…想定して構造設計をしておこう」、太田は構造担当に言っていました。

建築確認申請が行われました。申請にともない、これも瑞雲卿一帯のさまざまな事情が絡んでいたため、スムーズではありませんでした。建築家は過去の申請関係を踏まえた上で公官庁と折衝を重ね、認可に至りました。「もう一度確認申請をしなければならないかもしれないな…」これも設計陣の心配することでした。工事をやり始めて分かることがあるからです。

この時、すでに特命工事の指名がなされました。左官工事、円形サッシュ工事、錺金物金具工事、ジュータン工事です。元請けの施工業者が決まってからの下請け業者選定では難しい特殊工事を、建築家は施主とともに事前に選定していました。

一連の設計関係の作業の終わりに、積算書を作成し全体計画の見直しをします。そして次にこの建物の施工をする業者の選定に移りました。

今回は建物本体の建築工事、そして設備工事と2つに分けて発注することとし、主要な仕事はそれぞれ特命の形をとり、建築家の意図するところを組み込みました。それは、調査の段階から関わり、改修工事の本来の目的に沿うためでもあります。

改修工事とはいえ、この建物の奥の深さを考えた時、単に造りかえるというだけではなく、施工業者にヒアリングを行い、各社の提案も加えた見積書を提出して、これを評価の対象とする。ともかく造営主・岡田茂吉翁の思想に近づいて、お互いに工事に取り掛かる・・・。これこそが、従来の競争入札とは違う、新たな見積もり依頼となりうるという考えです。

見積依頼した施工業者は、建築では鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店の4社。設備では 太洋テクニカ、日管株式会社、菱和設備株式会社の3社でした。

見積依頼の時から、ひとつのドラマが始まります。それは次回からに。

(写真 水晶殿完成模型 ユニークなホタテガイ状の屋根形  トップページ 水晶殿内部)

 

 


2013年2月12日