新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
建物の構想を固める過程で、建築家はさまさ゛まな手法を使うと聞きます。
今回の調査から得た情報を整理していく中で、造営主の人物像に、思想にふれ、これに対する興味が増大され、「小説を書こう」ということになりました。
しかも、その縁はわずかの期間ではなく、建築家がまだ幼い時にまでさかのぼります。
建築はただの物体ではない。そう思った時から、随想を執筆し始めた、とのこと。
書かずにはいられない・・・そして2010年6月 216ページの随想発刊の運びとなりました。
この随想は、水晶殿改修工事の着工前に発刊され、多くの人々に読んでいただき、施主側にも、設計チームにも、大きな影響を与えたようです。
もちろん工事のガイドブックともなり、工事関係者必読の書となりました。
『水晶殿』はどうしてこの地にこのような建物が造られたのか、小さくて巨大な建築「水晶殿」の謎に迫ります。
著者の出版意図は、水晶殿を通して造営主である岡田茂吉翁を、多くの方に知ってもらいたいとの、ことだったのではないか。
太田は多くを語りませんが、本を読み進めてゆくと、そのように感じます。
ひとつの建築の設計監理の仕事をする際、その建物についての本を自費で出版するとは。
私の考え方の中にはなかったことです。
解体前の水晶殿の詳細な実測調査。創建当時の2種類の設計図の存在についての調査考察。プランニングスケッチ。スタッフへの指示。施主との濃密な打ち合わせ。既存水晶殿の模型製作など。
この時期、建築家は寝食を忘れ、多忙を極めていたはず。その中での執筆、、、
どこからパワーが湧いてくるのだろうかと傍にいて思った。
本の初版の1000部は完売し、3000部増刷となりました。
水晶殿関係者以外の方からも反響があることが不思議です。
(写真 既存水晶殿の現況模型製作中 模型スタッフ 加藤惣一)