イベント情報
新之介サロン 日野です。
先日、新之介先生のご自宅での建午のお茶事にお招きいただきました。
露地の緑が瑞々しく、爽やかな風が心地よく、五感と心が満たされるひとときでした。
お話では聞いていたステンドグラスの水差しは、鏡にうつる光と水にうっとりするほどの美しさ。
静寂の中で、お湯の沸くお釜の音。
お椀のふたを開けたときの湯気とともにたちのぼる香り。
おいしいお料理の数々、お酒をいただいた後のお茶がまた格別ということも初めて知りました
どれも貴重なお茶碗を触らせていただいたときに感じた重さや手触り。
特に、薄茶のときにアバンギャルドのお茶碗が運ばれてきたときには、一同あっと驚きました。
高温の窯の中でくっついてしまったという2つで1つのあのお茶碗でした。
「用と美」の最先端のお茶碗で新しいお点前を開発すればいいんだ、というお話は聞いていましたが、まさにその瞬間に立ち会えるとは! 驚きと喜びでした。
新之介先生は、アバンギャルドとは伝統に新しい工夫を重ねて行く所業だと言います。
お茶事のお席でのお話でも、「伝統とは古いものではないんだよ、積み重ねの連続だから。」
その言葉が印象に残りました。
琵琶床にあった400年前の法隆寺の古材は豊臣秀頼が寄進したものとのことで、先生の坐禅の師太田洞水老師様よりいただいたもの。中がくりぬかれていたので老師様が書き損じの書を入れていたそうです。そこから書をいただいていく人もいらしたのだそう。
それを眺めるたびに先人たちの仕事ぶりに思いをはせ、建築家としての拠り所にされているとうれしそうにお話されていました。
また、香合を拝見したときには、一同UFOのような形に、
これは元は何だったんだろうね? 周りに穴があいているからもしかして釘隠し??
クイズを解いているような感覚になりました。
何と1250年前の唐招提寺創建時の門の釘隠しで、木の加工には一流の技術がないと蓋をぴったり合わせることが難しいのだそう。
その他、茶杓を削ったとき、花入れやお茶入れを作ったときのお話、銘の由来。
お話を伺うにつれ、新しいものと古いもの、時空が融合されたような空間に酔いしれました。
最後に、待合に掛けられていたのは、巨大なスパナ??
最初に待合に入り、まず一同びっくりしてクイズのようになっていたもの、
それは水晶殿の改修工事の際の古材を活用したものだったとのこと。
一同手にもたせていただき、ずっしりくる重さと金属の香りを感じました。
このスパナで建築家としての箍を締めているのだそうです。
「名残を留める」、「手に得て心に応ず」。
普段よく新之介先生がおっしゃっていることは、正にこういうことなのか、と実感しました。
そして、床にかけられていたお軸は高僧の、
「応無所住而生其心」(おうむしょじゅうにしょうごしん)。
とらわれない心、人生を軽妙に生きるという語意とのこと。
手書きのポストカードをお土産にいただきました。
読み方を変えた 「大麦小麦二升五合」がどうしても耳に残りすぎて、なかなか覚えられませんが
早速飾って座右の銘にしたいと思います。
お心づくしのおもてなしと、空間に漂う「一座建立」の気に、ありがたく和やかなひとときでした。
今回のお茶事には、お正客の柴山崇志さん、陶芸家の佐々木泰男さん、歌手のきどよしえさんともご一緒させていただきました。
この秋には、お三方がコラボする大きなお茶会の企画が進行中です。
こちらもみなさんに喜んでいただけるような会になるよう、一致団結して盛り上げていければと思います。
写真:「樵隠庵」露地と寄付待合