イベント情報
2021年7月1日
織部の美意識
17年前、ニューヨーク市のメトロポリタン美術館で「織部 ― 転換期の日本美術」展(2003・10~04・1)が開催され、世界に日本文化の魅力が発信されました。
桃山時代の茶聖千利休の後、茶の湯の一大改革を成し茶道具に革命を起こした茶人、古田織部(1544-1615)展でした。
その数年前、私は盛んに茶事を催し、陶芸にはまっていた折、縁あって「織部十作」内、瀬戸の陶工〈元蔵〉作の黒織部沓茶碗を入手しました。
当時、古田織部が瀬戸を訪れた際、10人の名工を選んだという中のひとりです。
茶褐色の釉の窓に小さな格子絵がある沓型の茶碗で、革命とはいえ余りの変形と、重さに驚いたものでした。
しかし使ってみると、それまでの楽家の端正な形をした正統派茶碗に劣らず用に適い、使うほど掌に馴染み、愛着が増してきたのです。前衛とはいえ、用と美の新領域に至る一碗であると、織部の創作力とその美意識に思いを致したものでした。
以来、織部物は縁が有れば収集し、使うことを旨として来ましたが、飽きもせず、という実感が続いています。私にとっては用の可能性を感じさせる造形、創造を掻き立てる絵画性、定型の茶碗にはない美の世界を堪能させてくれる陶器となっています。
今はコロナ禍のためもあり、二年間作陶はできずにいますが、次回はまた古田織部に思いを致しながら、「アヴァンギャルド茶碗-その2」造りに勤しみたいと思っています。
写真:上 黒織部(古瀬戸)沓茶碗 織部十作 元蔵造 桃山期
中 黒織部笹絵筒茶碗 江戸中期
下 丹波沓茶碗 銘「安蛮技也瑠土」七十二自作
2021年7月1日