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土は火の洗礼を受けて別なるもの「やきもの」に変じます。
我が国では縄文時代より土を焼いてきました。
私が陶芸に魅されているのは、1万数千年に、火山が噴火し、火山弾が飛び散り。溶岩が流れ、山火事に土が焼かれ、それを見た先祖たちが火の利用を思い立ち、土が堅くなって土器になることを知り、その記憶が今日まで続いている。その時間が作陶することにより甦り、身体が呼応してくると思えることで、縄文の昔に生きた先祖たちを実感できることにあります。
火は火山噴火ばかりか、雷や大風など自然現象により山が燃えることから発見され、特に火山国の日本列島に棲んだ先祖には必然的な営みとなることは容易に想像できます。
世界最古の縄文土器から1万数千年、令和二年の正月の窯焚きの結果は、それは想像を超える出来栄えといえるものでした。
今では稀な穴窯で薪をもって一週間焚く焼成法。しかも今はなくなった丹波原土、備前、信楽の焼締めと引出しの丹波や黒泥陶。施釉の萩、志野に加え今回は唐津が入りました。
どんなものが焼けるのか興味深々でしたが、案の定見たことがないものが窯から出てきました。
唐津とはいえそうもない斑唐津、萩といえそうもない焼締め萩。その変じ方に驚きました。
私は紫色に変じた萩の茶碗を手にするなり、即座に「紫匂い」という銘を付けました。かの立原正秋が加藤藤九郎の志野茶碗に付けた銘と同じ銘です。
その志野は赤黒く、手にした焼締め萩は紫が匂うが如くの肌で、平安時代の十二単の襲の色目「紫匂い」に相応しいものと思えました。
その他十数点の茶道具は、やはり見たことのない様相をしていて、内心小躍りしていました。
(佐々木さん有難う。さあ、何時の茶事に使おうか・・・)。
思いを巡らせながら帰路につきました。
写真:上 焼締め萩 茶碗 銘「紫匂い」
上の2 唐津 茶碗
中 焼締め萩 茶碗
中の2 焼締め萩 茶碗
下 焼締め萩 水指
2020年 自作十作の内5作