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建物は落ち着いた雰囲気になってきましたが、毎年悩まされてきたのが露地の苔でした。
造営当時は杉苔を張り、気分上々でしたが、その気分も二年で潰え、再度杉苔を張り、また二年で全滅でした。
気を取り直して庭師に相談し、下の土を替え実生の杉苔を張りました。
これも二年で大半が枯れ、以来、何度も砂苔など違う種類の苔を張りましたが、殆どが二年で育たず、なす術もなく自信喪失となっていました。
30年の間茶事・茶会をしてきましたが、その都度繕いをした露地の苔でしたので、何とかしなくてはと悩みの種でした。
昨年の11月の茶事の前に、間に合わせで近くの山に入り、水辺の桧林の根元に生えている山苔を採ってきて外露地に張りました。苦し紛れというやつでした。
そして半年経ちました。
何と、新芽が出てきて張り痕が見えず密集してきたではありませんか。
我が露地で新しく育った苔は、名もない何種混合の山苔でした。
究極、ここの庭に合う苔は近くにある苔でした。
何も杉苔など京都の庭園にあるようなものではなく、気候を含めこの土地に自生しているものが最適という分けでした。
そういえば、白隠禅師の戒語に「水の中にいながら喉が渇いたと水を欲しがる奴がいる・・・」。遠くに求めなくとも求めるものは足元、日常にあり、というのを思い出しました。何のことはない、足元を見ることだ、と。
この五月の末に若者たちを招いて茶事をします。
名は「建午の茶事」です。
トイレの掃除から準備を始めました。茶事は掃除から始まり、掃除に終わるもの。
アバンギャルドの道具を使い、露地の苔に教えられたことを客に話そうと思っています。
花粉症による洟垂れオヤジにならないように心がけて・・・。