Sのプロジェクト
広報の石川です。
前回出たキーワード「和顔」と、Sのプロジェクトのつながりを探ってみたいと思います。
タイトルは「わげ(が)んあいご」と読む、仏説『大無量寿経』にある仏教用語です。
『広説佛教語大辞典下巻』には、【やわらかな顔色とやさしいことば。やわらいだ笑顔をし、親愛の情のこもったおだやかなことばをかわすこと。なごやかな顔、愛情あることばで人に接すること。】とあります。
お薬師さまが導いてくださるその先には、世間の様々な苦しみから逃れることができる人々のすがたがあります。
ここで、さらに詳しく、その人々をイメージしていくと…
まさに「和顔愛語」のコミュニケーションが広がる世界が浮かび上がってきました。
笑顔と思いやりをエンジンに、人々が高度に調和する世界です。
さて、そんな空想をしている中で、ふと気になったことがありました。
「和顔」とは、具体的にどんな顔や表情のことを指すのでしょうか。
試しに鏡の前でいろいろな表情をしてみましたが、どれが「和顔」なのかは、なかなか確信が持てません。
とうとう「これだ!」と思った笑顔を友人にも見てもらいましたが、返ってきたのは「うーん、微妙な顔。」との冷たいコメント…。
しかし、次のことばにハッとさせられました。
「そういう意味では、君は普段から『和顔』をしている気がするけど。」
そう言ってくれた友人も、普段からにこにこして、柔和で穏やかな顔をしています。
思いを巡らせてみると、家族や知人、テレビで見かける人たちまで、みんな愛嬌があって親しみやすい顔をしています。
徐々に、日本人はそもそもみんな「和顔」なのではないか―そんな気もしてきました。
日本は古来「大和」と称されたように、大いなる和を育んできた民族です。
そして、営々と紡がれてきたその歴史が、現代の私たちの顔立ちに息づいているとは考えられないでしょうか。
つまり私たちは、和を形成することに特化した顔立ちをしている―ということです。
「和顔」とは、「なごやかでやわらかな表情」という意味と同時に、「日本人の顔」そのものを示すことばでもある。
そして、その「和顔」を未来の日本へ継承していく―
それがSのプロジェクトが目指すものではないでしょうか。
では私たちの「和顔」を未来へ継承するために、具体的に何が必要なのか…。
機会を得て、建築家へ質問してみたいと思っています。
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総務の佐々木です。
石川さんはもしかすると、深いところで建築家のプランを解っている、そう思うえる解説文です。
私も知らない新之介さんの構想に迫っているようです。
新之介さんは17年前に、「愛語」という大きな書を書き、伊勢丹で書の個展を開いています。
「愛語」がSのプロジェクトの根幹に迫るキーワードかもしれません。
和顔が日本人の特色とすると…。
日本人という人種名が出てきたのは明治以降のことだそうです。
それまでは、会津人、薩摩人、土佐人、駿河人・・・。
日本列島に生息してきた人たちは大和の人。
大和は日本人の異称といわれます。
「和の心にて候」は祭事ですが、新之介さんは日本の建築家としてここから出発してきたように思います。
そうはいっても、私にも分からないことばかり。
石川さん宜しくお願いします。
(写真 書「愛語」 本紙82×142 1996年静岡伊勢丹展 図録『相聞の書』より)
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設計・メモ-2