日本のすがた・かたち
2023年2月2日
大兄逝く
一昨日、20数年来の交流があった出版社社長が亡くなりました。
御歳94でした。
三年前、三島のウナギを食べたいとの来訪され、親しく会食したのが最後で、二カ月前に電話をした時には、療養中で会話は叶わない状態でした。
東京新宿にあった「理文出版」は主に美術関係書を扱う個性的な出版社で、私も数冊世に出して頂いています。
その名物社長には、本を上梓する面白さや、それによって自身に起こる文化的変化の妙を教えられました。お会いする毎に思うことは、口角泡を飛ばす理論家のイメージで、特に国家や世情についての理念には教えられるところが多く、その姿勢は80歳を過ぎた老体とは思えない程の逞しさでした。
亡くなる前日の未明、夢枕に立ったのが最後の一瞬でした。
今日になって、寂しくなったと実感しました。ご冥福を祈るばかりです。
このコロナ禍中、頂いた年賀状の数の減りが示すように親しかった方も数人亡くなり、一入寂しさの増す旧正月となりました。
この四年間、私は大きなプロジェクトの設計監理の任に就き多忙を極めています。
周囲には忙しくて年を取っていられないと、痩せ我慢していますが、喜寿を越した体力の衰えを気力を以て補っているような日々も何時まで続くことやら…。
過去を思えば悔いが多く、この先を思えば不安が募るのが人生。
現在、そう、「今ココ」を本能の赴くまま生きている自分で可、と思い、愛唱歌「人生いろいろ」(島倉千代子)を唄いながら気合を入れている昨今です。
寂しさは 香焚く窓辺 星の夜 あの日あの貌 想うその時
2023年2月2日