日本のすがた・かたち
それはある日、知人の紹介から始まった。
少し時間をおいて、何度か行き来をするようになった。
やがてその思いの丈や中身が分かってきた。
心は揺れながらも、季節は過ぎて行く。
そして契を交わすこととなった。
この契が互いに多大な影響を及ぼすと思った。
何度も何度も空想を重ねた。
何度も何度も妄想を重ねた。
過去の歴史もその中に漂っていた。
やがて互いの想いがすがたとなって見えてきた。
そして他人を間にしてまた契を交わした。
すがたをかたちにすることが始まった。
私は昼夜をおかず、心を尽くすことにした。
かたちは夢に現れ、絶えず私を捉えて離さなかった。
そして月日が過ぎて行った。
それは、すがたがかたちとなって現れるようになった。
肌の色も、艶も、我が手の中に在り、触れる喜びに浸っていた。
できることなら、このまま永遠にこうしていたいと思った。
絶頂の時が訪れて、痺れるような感覚に襲われた。
すがたかたちが眼の前に出現する。
出会ってからの年月が走馬灯のようによみがえる。
あの時のすがた、あの時の色、あの時の肌…。
一瞬にして訪れる別離の時。
もう私の手は届かない。
無事を祈る他はない。
そして末永く大切にしてもらうようにと。
そして私は“建築は恋愛である„とつぶやく。
建築の設計監理を生業としている私は、設計する建築が常に恋愛の対象となっています。
三島由紀夫は“文学は建築である„といっていますが、私には”建築は恋愛„です。
建物が完成し、施主に引き渡される時、私の恋愛は終わります。
それは息絶えるまで繰り返される私の所業だと思っています。
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