日本のすがた・かたち
3・11の大災害に遭った地区で、高台移転計画が推進されています。
宮城県石巻市北上地区でも移転計画が進み、その地域で震災に遭った建築家たちが住民の中に入り、行政主導やコンサル会社主導のまちづくりに一定の距離をおきながら活動しています。
その基本となる位置づけが「復興の主役は住民である」ということです。住民こそが自分たちのまちづくりの中心となれるように、そのサポートをするというものです。
今、復興計画を進めている地域では、集落移転案を作成し、住民説明会を開催し、住民意向調査や災害公営住宅防災集団移転の制度内容などを盛り込んだもので計画を推進しています。石巻市では、今年4月に有識者を入れた「石巻復興まちづくり検討会議」が発足させ、行政主導型の計画立案をしてきていますが、その中身は住民不在の計画といっても過言ではないものです。住民の中に入り込み合意形成を重要視するという視点が欠けているためです。
これから各地で災害復興工事が始まるでしょう。その完成後のまちなみを私は想像しています。多分、全国に統一されて設置されている信号機のようか、どこの国のどこの地域のどこの集落なのか、多分判断のつかない街区ばかりになる可能性が高いとみています。
私は夢想します。
日本全国の集落が本物の木造建築で造られ、しかもその集落が地域の生活特性に合った表情をしている、というものをです。
我が国では先人が営々と積み重ねてくれてきた、「木の建築」があります。木造建築には先人の叡智が凝縮しています。集落ごと木造で造り直せるチャンスが今巡っています。
育ててきた木を使い、手作りの集落を作ることをすれば、水害時に山林からの流木が河川の氾濫を増長することを緩和させます。また、植林しすぎたために全国の山が荒れていますが、それも解消される可能性があります。そして木材は育てる気さえあれば永遠の建築資材であり、エネルギー保全のためにも大いに役立つはずです。我が国は「森林国土」という大前提があることを思い起こして欲しいものです。
生まれ育った土地の集落には、その地の気候風土や生活環境から形成された独自の表情があります。集落の痕跡を残す作業も必要です。また、日本のまちなみづくりには、全国から集う職人の活躍が欠かせませんが、「木の建築」造りは、きっと関わる人達に自然への敬意と美しいものへの憧れをもたらしてくれるはずです。
今、声を大にして会う毎に若者たちに訴えているところです。
(写真 奈良井宿のまちなみ)