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新型コロナ禍で自粛軟禁状態が続いています。
私の場合、生業が建築設計のため、元々が自閉的生活のため、現在のところ余り不自由は感じていません。
先日お世話になっている大工の棟梁に、茶の湯の道具の長板を仕上げて頂きました。
材料の杉は秋田の鳥海山の銘木「神代杉」。約2500年前の火山の噴火により埋まったものとされます。
この材は先日、秋田の能代市に木材買い付けに行った際に協力して頂いた方からの、贈物でした。
多分その折、私が鳥海山の神代杉を見て、欲しそうにしていたのを見て、のことだったと思います。
「求めよ。さらば与えられん。」とは、よく言ったものです。
黒光りした木肌は神々しく、美しい姿を見て、即座に「山ノ神」と銘を付け、認めました。
これで、炉風炉の長板が揃いました。
昨年は炉の長板を黒柿で作り、銘を縞の景色から能の羽衣から「清見潟」としました。
これも縁あって頂いた新潟県産の黒柿(樹齢三百年以上)で、この黒柿の景色を持つ材は5万本に一本といわれる高級材で、銘木中の銘木とされるものです。
その折の茶事で使用した水指は縄文中期の火焔土器です。これは新潟県の信濃川流域の十日町付近馬高遺跡出土で、紀元前3000年、約5000年前のもので、共に新潟県繋がりでした。これに中子を仕組み、水指に仕立てたものです。
茶事の楽しみには道具の準備もあり、毎回の道具組の作業は、建築の設計作業に似るところがあります。想像が限りなく膨らむところがとても似ています。。
全ては「客(施主)が喜び、楽しむことになるように」、と。
それを見て、亭主(建築家)は喜びを多とする、と。
茶事は緊迫した4時間の中で、人と交わり、我がことを知る儀礼・儀式。
人間は、「仲間になりたい」、「知りたい」、「生きたい」、「伝えたい」、とする生きもの。
思うに、日本人が発明した茶事は、これら4つの要素が全て網羅されたものといえるようです。
人間の品性は美しいものとの出会いでしか磨けない、とは先賢の言。
茶の湯の道具を創りながら、我が国の深遠な文化に遭遇しています。
写真:上 神代杉の長板(風炉用)
ヨコ:2.8尺 タテ:1.3尺 厚:(6分)
下 黒柿の長板 (炉用)
ヨコ:2.4尺 タテ:1.0尺 厚:(4分)
水指(縄文中期の火焔土器)