日本のすがた・かたち
神々の
すがたとなりぬ白き紙垂(しで)
清ら美ましき大和ごころは
正月のお飾りを店頭で見ることが多くなりました。
お飾りは日本列島の正月を荘厳する主役で、全国どこに行っても見る魔よけの印です。
また年の瀬になると、注連縄(しめなわ)もいっせいに新しくなります。
注連縄の起源は古く、『古事記』に「天照大神(アマテラスオオミカミ)が須佐之男命(スサノオノミコト)の乱暴を畏それ、天石屋戸(あまのいわやど)に隠れた時、その前で天宇受売命(アメノウヅメノミコト)らの神々が、賑やかな宴を催した。これを怪しんだ天照大神が覗いたところ、傍に隠れていた天手力男命(アメノタヂカラオノミコト)がその手をとり、天石屋戸から引き出だした。
そして布刀玉命(フトタマノミコト)が尻久米縄(しりくめなわ)をその後ろへ張り渡し、「ここより内に戻れませぬぞ」と告げた」と書かれています。
注連縄はこの『尻久米縄(しりくめなわ)』に由来すると云われています。 神代の時代から今日まで続く “美ましき風習” は、幾つもの時代を越えて今日まで伝わっています。
私は注連縄のかたちに日本人の清き美しさを感じ、その材料である稲藁と白和紙に魅されています。この時期は、各地の神社仏閣、大岩や巨樹に新しい注連縄張りかえられ、儀礼や儀式が行われます。
そこには神ごころが鎮座する証が立ち、先人が重要な生活行事として大昔から祀ってきた風習が、今日に至って、特別のことでありながら、特別のことではない生活行事として伝わっていることを思い、知らされます。
昨今はクリスマスソングに席巻されて、“もういくつ寝るとお正月・・・”の唄を聞く機会が少なくなったのが残念ですが、私の中ではイヴ頃からこの唄に幼い時分の思い出を重ねることになります。
遠い日、父が暮れになるとお飾りや、注連縄づくりに精を出していたことを思い出し、特に注連縄の藁を綯(な)う姿が目に浮かんできます。私にとっての年の暮れは、父を思い出す何日かであり、日本人の長い精神的歴史を改めて思う縁日となっています。
正月には父母や兄妹たちと囲んだ新年の食卓も思い出されます。