日本のすがた・かたち
太虚(そら)により
かたまり知れる山川を
神のすがたと
見ゆる先人(さきびと)
私たちの住む日本は、とても複雑で脆弱な地殻の上に乗っています。
地球の表層である地表は、地球を覆っている地殻によって成り立っていることは既に分かっていますが、その10数枚のプレートに分かれている内の5枚が日本列島の下にあり、丁度その衝突部に位置しています。
この列島は北米プレートとユーラシアプレートの2つの大陸地殻にまたがり、さらに太平洋プレートあるいはフィリピン海プレートの沈み込みによって2方向から強く圧縮されているという、複雑で厄介な地殻上の地上突起物で、最近注目され始めた房総沖と伊豆半島付近の2ヶ所のトリプルジャンクションの存在は、4つと新たに存在が分かった1枚の計5枚のプレートがぶつかり、せめぎ合う場として世界に類例がないことが分かってきました。
これは日本列島がいかに複雑な力に支配されているかを示すものです。
マグニチュード7以上の地震は世界中でこの900年間に900回ほど起きているといわれますが、そのうち一割の地震が日本で起きているようです。マグニチュード8クラスの巨大地震も日本海溝や、南海トラフといった地域に集中し、ここでのプレートの衝突がいかに激しいかがわかります。また、太平洋プレートの日本列島下への活発な沈み込みは、日本列島を世界でも有数な火山列島にしています。
太古から地震や火山活動の多発地帯に住みついた我々の祖先たちは何を考え、何を発見してきたのでしょうか。
私は、ここに日本人が蓄積してきた文化的特性があるような気がしています。
天変地異の多い日本列島には“人間はその自然の中で生息する生きものの一種に過ぎない”というものの考え方が早くから形成されてきて、日本人特有といわれる無常観や諦観は、火山噴火、地震、台風、雷、豪雪などの、自然の大きなちからの前には始めから対抗できないという状況下から生まれてきたようです。
もし、日本列島を覆っている靄のようなベールを日本文化だとして、それを「和の文化」と呼ぶのなら、その基は地殻5つのプレートの上に育まれてきたものに相違なく、脆弱なプレートの上にのった列島ゆえにできてきた特異なすがた・かたちであると考えられます。
その柔らかなベールは世界各地のあらゆる文物を受け入れ包みこんでは和の文化に変え、そして高い精神性を帯びたかたちにして放出してゆく……。
かつて和の文化には、人間が地球を守るとか無駄を奨励する消費拡大とかの声はなかったはずで、先人が携えてきた自然観や道徳的行動は、自然が生み出してくれたものを有難くいただいて生きる、というものでした。それは自然と対立し克服するというような西欧の人間最優先思想とは違い、はるかに自然の理に適ったものになっていました。
そこで、少なくとも日本では、人間が地球を心配するためにエコ活動などをするのではなく、自分たちが苦しむのが嫌だから”守るとか拡大”とかになっていることを、本当のところをすり替えることなく、子どもたちに教え伝えていく責任がありそうです。
私は、宇宙に膨大な量のゴミを放出し続ける大人の姿にロマンを見ることがありません。かえって美名に隠れた人間の傲慢さを覚えます。近い将来宇宙ゴミをどうするのかが問われることになるはずです。
大地からロケットが飛び出す度に、『何の用があって宇宙へ行くのか……』の、誰かの言を思い出します。
(参考図 全国地質調査業界連合会)