Sのプロジェクト
三島御寮は、本物の木の建築を目指します。
よくよく考えてみると、「本物の木の建築」とは何と怖い言葉なのでしょうか。
「木の建築」についてだけでも、何をもって木の建築というのか、という話から議論は尽きません。
例えば、木造建築や木構造ときくと、主要構造部を木造とするなど技術的な定義で説明できそうです。
しかし、「木の建築」となると、構造的な技術や言葉の定義では収まらない何かを感じます。
そこには、木という素材の持つイメージ、そこから連想される大地や自然、そして何より私たち日本人に脈々と受け継がれてきた木に対する信仰など、日本文化の背景まで思いが及ぶからでないでしょうか。
ここに、畏れ多い怖さがあると思うのです。
その頭に、「本物の」が付くわけですから、重みは計り知れません・・・・・・。
さて、世の中は木の建築ブームのようです。
建築雑誌を見ても、木を大胆に使用しているデザインが表紙を飾ることが多々あります。
その背景には、構造技術や防火技術によって、中大規模の木造建築が実現可能になってきたことや、地球環境問題を視点とした国産木材使用の施策などが挙げられるでしょうか。
木の建築といわれている建物の中には、表層的に使用されているものも多く、何でもかんでも木を使えばいいってもんじゃないよ、と思わないでもありません。
が、世の中の動きは、そこに真剣に異を唱えるよりも、どんな形でも木をじゃんじゃん使うべきだという歓迎ムードの方が多い気がします。
どんな使われ方にせよ、日本では木を使用することは善になるのだな~、とぼんやり考えます。
なるほど、だからこそ三島御寮では、あえて「本物の」という言葉が必要なのかもしれません。
三島御寮のプロジェクトに携わることは、木の建築を極めることに繋がっていくことだと考えています。そして、繋がっていくためには、相応の覚悟と勇気がいります。
知命の歳にして、未だ惑い、もがき続けておりますが、私の心を突き動かしているものは、「本物の木の建築とはなにか。これを突きつめたい。」という強い思いです。
望月美幸(建築家・JIA会員)