新之介文庫だより

2018年11月25日
近詠・句歌都々逸32

 

何時か見た 恋の色かな 西王母

 

フグ刺しに 父やともがら 波の音

 

設計の 嬉しさに逢い 照葉挿す

 

落葉や 一縷の望み 待つは春

 

星冴えて 我が想いかと 眺望す

 

麗人の 面影見せて 散る紅葉

 

忙しや 心亡ぼす 古稀の坂

 

コキ過ぎて 耳も昭和も 遠くなり

 

駆け寄れば 彼待つ橋に 紅い月

 

することは 際限もなき 富士の雪

 

明日をのみ 思いわずらう 白椿

 

白椿 いつか来た道 回り道

 

人は皆 苦しみ生きる 落葉かな

 

たちまちに 生老病死 杜鵑草

 

月見草に 話しかけては 散歩道

 

黒髪や 白きが肌に 翳る月

 

設計や 苦し紛れに 月を描く

 

山を見て 海を描くかの 恋や罪

 

便り来て 返さぬ弱さ 笑う猫

 

遠ければ なお燃えにけり 月の路

 

 


2018年11月25日