Sのプロジェクト
「三島御寮」造営計画は、現在、造営図書出版の準備をしています。
先ずは、全体の造営構想をまとめた文書の『三島御寮造営計画書』と、「茶の舞台」他10棟の計画図と設計図をまとめた『計画・基本設計図』、そしてスタデイ―用の模型です。
構想を立てている間に絶えず脳裏をかすめているのが三百年後という歳月です。
今から三百年後の日本がどのようになっているのかは解りませんが、この建物が三百年経ったらどうなるのか、は想像がつきます。
今から三百年前に築造された建築を見れば、経年変化や劣化状態が分かり、大規模な修理や改修も理解することができます。
現在まで遺ってきた古建築の凡ては、当時の工人達の優れた見識と熱意、それを裏打ちした願心、使命感によって建造されてきています。それを後世の人たちは感受し、伝統を守り育ててきたと考えられます。
「自分たちもそれに倣い、新たな創造をして行こう」ということだったと思います。
永い過去からのこの連鎖は、建築による生活様式を変化させながら、民族の誇りを抽出させてきたといえます。言語と共に日本人のアイデンティティがここにもあることは間違いありません。
茶の湯のステージである「三島御寮」は普遍的な日本の文化の基軸を演ずる建築群であるため、この計画は全国の自治体の事業に取り上げられる可能性もあるのではないかと思います。
「木の使用と植林」、「木の建築造り」、「建築技術の保全、育成」、「茶の湯の儀礼・儀式の習得」、「伝統産業の振興」、「日本文化の発信」などが期待できる本計画は、いずれ理解されることになれば、仮称「○○御寮」として各地で造営されるのではないかと思っています。
そのためにも計画全容が理解される設計図書を作り、ご要望とあらば、図書一式を進呈させて頂く予定です。
美しいというものには古いも新しいもありません。この平成の時代に美しいと思える茶室群を造ることが願いです。
全国各地に、木造の茶の湯のステージが造営されることを夢見るこの頃です。