太田新之介作品集
2015年9月22日
作品-14 書
書 「月」 一字
造作余話
この「月」は先年書いたものである。
今年の中秋の名月は9月27日(十五夜)で、満月の28日と共に、月が大きく見えるスーパームーンだそうだ。
毎年のこの日は、お供え物をして歌など詠んで過ごしていたが、今年は講演会があるため、一足先に花を入れ書を掛けた。
「月」は禅僧太田洞水老師の字が好きで、私もそれに倣い、何度も何度も書いてみた。
この字は、ようやく老師のような書に近づいた、と思えた「月」だった。
満月ではないが、上弦の月のイメージである。
「月」の字を書くと老師を思い出す。
老師の元を離れる日、「太田さん、あなたはこれから歴史に遺こる仕事を沢山しますから、精進して下さい。」
このはなむけの言葉は、いつまでも耳に残っている。
筆を持ち、白い紙に向かう時、いつも老師の慈顔を思い出す。
亡くなってもう30年近く経つが、幾つになってもあの時の励まされたことは忘れない。
「月」を書くたびに、私もひとを励ますような人間になりたいと思う。
筋割り表具 一文字 竹屋町絧入遠山、 中廻し 草木染古代絓(しけ)、
筋 竹屋町印金、軸先 象牙
私の好みの表具とした。
月見とはいえ、花が多すぎた感も・・・。
2015年9月22日