太田新之介作品集
2014年8月5日
作品-12 篆刻と和歌
私には何人かの恩師がいる。
すでに高齢の方が多く、この頃は消息をお訪ねすることも少なくなっている。
高校生の頃から50年余の交流をして下さっている恩師は部活の顧問をされていた黒川威先生である。
直接教科を教えられたことはないが、「青雲の志」を持つことを教示された。
先生は現在も慈眼をもって私を見続けてくれて、私の来し方に多大な影響を与えている。
その先生が10数年前から篆刻を始められた。
作風は一般的な文字篆刻ではなくて、心象を絵画的に表現するユニークなもので、時折印譜を頂いて刺激を受けていた。
今夏、先生から新作の印譜が6枚届いた。ご関係の機関紙に掲載されたものという。
嬉しかったのは、私の和歌(『於八於五(おばおい)』句歌集2009年刊)を添えて頂いていることだった。
先生とご一緒できたことは望外の幸せだった。
傘寿に近い先生は、「風船が、萎むような老化を自覚するこの頃です。」と文に結んであった。
老境に至り、なお創作意欲に衰えを見せない先生に励まされた気がした。
人生はどのような人と交わり、そのことがどのように自分に影響を与え、それを杖にしてどのような人生を歩めるのか。
まだまだ先生作の篆刻を観たいものだと思った。
この夏は楽しや石に絵を刻み
吾の歌にと添える師の貌
2014年8月5日