新之介文庫
知音(ちいん)
人は巡り合い、そして別れる。別れて、そしてまた……。
亭主となる男は美術館の館長。
親しかった故人のために追善供養の茶事を催すことに。
茶事の準備は半年前から始まった。
その折、ひとりの美しい女性を見かける。
茶事は故人と親交のあった禅僧を正客に五名が招かれた。
露地での迎付けの際、男は客と二十年振りの再会を果たす。
床の間の掛物は良寛禅師の偈。
相逢又相別 相い逢(お)うて 又 相別る
來去白雲心 来去(らいきょ)は 白雲の心
惟留霜毫跡 惟(ただ) 霜毫(そうごう)の跡を留むるのみ
人間不可尋 人間(じんかん) 尋(たず)ぬべからず
人は巡り合い、そして別れる。別れて、そしてまた……。
追善正午の茶事は綿々密々に進行し、一会は濃厚な文化の香りで一同を包む。
人の世の縁の儚さ、切なさ、愛おしさを、茶事はもろともに語る。
茶の湯の精髄である茶事一会。
本著は、追善の茶事が織りなす人生模様と、邂逅の物語。
造本体裁
判型:電子書籍(Kindle版)
定価:1,000円(税込)
発売日:2017年11月
著者:太田新之介
発行:新之介文庫