新之介文庫だより
新之介文庫の佐々木です。
錺(かざり)金具と言えば、神社仏閣に付く金物や、祭礼などの「屋台」「おみこし」の金色に光る飾り物が一般的です。
京都の職人の町とも言える五条中心部に、創業明治10年の㈱森本錺金具製作所があります。
今年は伊勢神宮の式年遷宮に当たります。
外宮のそばに「せんぐう館」があり、そのなかに伝統技術の紹介をするコーナーがあります。
そこでは各職の技法をはじめ文化の継承をめざし、森本さんも紹介されております。
機械化が進み、一品生産のような手仕事の森本さんの製品は、完成品を観たら誰もがその魅力に引き込まれます。
水晶殿の建設には、設計当初より参加し、改修前の建物を建築家と一緒に見るところから始まりました。
森本さんは水晶殿から相模の絶景を見て感動し、是非この仕事をさせてほしいと申し出ました。
そして、銀メッキの仕様を「銀の無垢で作りましょう」といいました。
太田の仕事に注目していた先代森本安之助氏が、遺してくれていた銀のインゴット。
予算は当初の通りでよろしい、とのことでした。
今は亡き先代が協力してくれている、と太田は感謝していました。
それにしても森本さんを感動させた、水晶殿造営主岡田茂吉師のすごさ。
それまでの長い建築家との付き合いの中で、その実績は数多くありましたが、式年遷宮の仕事の過密なスケジュールの中、協力していただくことになりました。
太田は鳳凰と龍と瑞雲をデザインの原点におき、ドアーハンドルは偉大な人物(龍)がこの世に出現するときに現れるという霊鳥「鳳凰」と出現する人物である「龍」をスケッチしました。
円形ホールの出入り口ドアーに付けられる銀製のハンドルは、鳳凰と龍が、それぞれ口を開いたもの閉じたものの対で製作られました。
瑞雲のデザインを取り入れた「引手」は造営主が60年前、自らデザインされた瑞雲文で、これは円形ホール中央にあるエッチングガラスのデザインの一部です。(原形は箱根美術館3階応接之間の透かし欄間の意匠)
これらは、材料選びから始まり、デザインのスケッチによる試作品の製作、さらには本番の製品作りまで、様々な工程を経ています。
納品取付まで時間がかかってはいるものの、それを忘れるほどの一連の仕事とも言えます。
実に緻密な作業の連続です。どこにもない一品製作だから、また日本の第一人者の仕事ですから水晶殿の再生にはふさわしいものとなりました。
水晶殿を訪問されましたら、4代森本作品をご覧下さい。
(写真 出入り口ドアーハンドル 担当者チーム製作過程視察 左端森本安之助氏)